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一ヶ月前――――
私はお母様と姉様達と、森へ散歩に出掛けたはずだった。
お母様が作ってくれた、大好きなハチミツサンドとチキンサンドでランチをして。
先に食べ終わった私は一人、花から花へと舞い移る、美しい蝶に夢中なって追いかけていた。
記憶はそこで途切れ、いつの間に意識を失ったのか
次に目が覚めた時、私は絶望の最中にいた。
「おはよう、王族のお姫さん」
見知らぬ場所。
下卑た笑みを浮かべた、粗野な出で立ちの大男共。
堪え難い不潔な匂い。
手を体の後ろで縛られ、自由の利かない体。
重い頭。
まだ十にもならない、全くの世間知らずな子供だったけれど、私はその状況が何を意味するのかすぐにわかった。
お父様なら絶対、お金を用意してくれる。
家来達がすぐに助けにきてくれる。
神様のご加護があるから私は殺されはしない。
すぐに帰れる。
―――そう信じたからこそ、毎日が地獄だった。
毎日、毎日、薄汚れた暗い小屋の埃臭い空気の中で、奴らは私をいつ殺すかという相談をしていたのだ。
"金をもっと要求し、逃げる手段も用意させ、コイツを返す直前に王族らの目の前で首を切るのがいいだろう"
"いや、一緒に連れ出して娼館か奴隷商人に売れば、更に金になるじゃないか"
"それよりいっそ、殺して死体をネットに晒すのが1番の復讐になるだろうよ"
"そうだな"
"それいいな"
"そうしよう、ハハハ"
神様はいない。
いたら、こんな目には遭っていない。
いたら、こんな酷い場所は存在しない。
いたら、こんな人間は存在しない。
神様は、いないの。
いたら私は…見捨てられるはずないもの。
見捨てられる人間がいるとしても、私はそんなはずなかったもの。
信じるのをやめて、覚悟をしなければ。
死ぬのは痛い?
死んだら天国はある?
死んだ御祖母様に会える?
ああ…神様は信じなくても、天国は信じてもいい…?
私が拘束されていた期間は、約一ヶ月。
私にとっては何十年にも感じた。
その何十年で、私は沢山のものを諦めながら、ただ呼吸だけ繰り返し生きていた。
ようやく、絶対的なその絶望の世界に終わりがやってきたあの日
そう、あの日
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