聖なる夜の…ー前編ー
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イベント会場の裏手に、その入口は用意されていた。
この日の為にわざわざ特設された、数十メートルにも渡る壁と門。
その向こうには、いつもなら普通に通り抜けられるようになっている公園までの林に囲まれた道がある。
《それでは、二人きりの聖なる夜に行ってらっしゃーい!!》
大勢の観客に見送られて門を潜り、またすぐに門は閉じられた。
目の前に広がるのは、林の木々一杯に輝く綺麗な綺麗なイルミネーション。
その先に見える公園にも、あらゆるイルミネーションが施されているのがわかる。
『う……っわぁぁ~~~………きっ……れぇ~~~~……』
クラピカに腕を絡ませ、リンはまるで楽園にでもいるような気持ちになり、うっとりと深く魅入った。
木々を繋いで光のトンネルから幾つも吊り下げられた星々。
美しい魔法のような世界に、たった二人きり。
まばゆすぎて涙が出そう。
『綺麗だね……』
見上げながら呟くけれど、クラピカからの返事はない。
そういえば、いつまでも起き上がらないクラピカを無理矢理引っ張り起こしてから、一言も声を発していない気がする。
冷静になった今、思い返すと何だか相当強引な事をしたなぁと自覚が湧く。
リンは急に不安に駆られ、クラピカの顔を恐る恐る覗き込んでみた。
あんなに嫌がっていたクラピカにあんな無理矢理しちゃって……
押さえつけて、その気持ちをねじ伏せるような真似しちゃって……
ヤバい、今度こそ嫌われててもおかしくない……!
―――けれど、そこに在ったのは
いつも通りの優しい微笑みで。
リンを見つめ、イルミネーションの光を瞳一杯に閉じ込めた、綺麗な綺麗な彼の笑顔が在った。
『お……怒ってたんじゃないの?』
リンがビクビクしながら尋ねると
「…もういい。そんな毒気は失せた」
ふぅ、と諦めたような溜息を吐き、クラピカは視線をイルミネーションの方へと向けた。
『確かに毒気も全部取っ払ってくれちゃうよね、この光景……
作るの大変だったろうなー……』
リンの純粋な感想に、クスッと笑いが零れる。
毒気を抜いたのはそっちではないのだが……
今は何だか癪だから、言わないでおこう
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