春の向日葵
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帰路につき、二人で手を繋いで並木道を歩く。
『ねぇ、そういえばさ、色々巡ったけどCD屋さんにだけ入らなかったよね。なんで?』
「CD?……ああ。
お前、いつから尾行てたんだ?」
『ペットショップ見てるくらいから』
「ほぼ最初からだな……そんなに長い時間お前の尾行に気付かなかったとは……」
思いがけず落胆させてしまい、慌ててフォローするリン。
『きっと夢中になってたからだよ!それに私だってビスケに鍛えられて上手になってるし!』
慰めが逆に癇に障ったのか、眉間にシワさんが戻ってきてしまった。
いや、それより話が逸れてる逸れてる。
『てゆーか!CD屋さんだよCD屋さん!
私が音楽聴かないから?
最近はエイジアンアイドルとか好きだから音楽番組は見るようになったじゃん!』
ど―――――でもいいと言われれば、確かにど―――――でもいい事なのだが
長い一日の中で、店に入りかけてやめたのはそのCDショップだけだったので気になっていた。
「………だからだ」
返ってきたのは一言。
『え?なに?だからなに?』
「だからやめたんだ」
『ら、らしくないなぁ……ちゃんと言ってよ!わけわかんないよ!』
「嫌だ」
『えええっっ!!』
「家まで走るぞ、ルビーが待ってる」
『え、ちょっと!ええ!?待ってクラピカー!!』
リンの手を強引に引き、クラピカは走り出した。
『クラピカ!そうなると気になる!教えてくんなきゃ眠れないって!』
「どうせ今夜は眠らせないから関係ない」
『えっ……えええええっっっ!!??』
「あはははっ!」
澄み切った夜空に、クラピカの笑い声とリンの叫び声が響いた。
春の風がまだ肌寒い季節。
ラタルが帰ってくる、約一年前のある日。
―――言えるはずない
珍しくアイドルにはしゃいでいるお前を見て、不快に思っていた事など
喜ぶならCDでもと考えた一瞬後には、やっぱりこれ以上はしゃがれては困るという結論が弾き出されていた
なんて事を言えば、お前はきっとこの上なく喜ぶのだろうな
言えない私のプライドを、今は許して欲しい
お前の言う通り、一瞬も離れず傍にいられる毎日がやってきたら
その時に、ゆったりとした時間の中でアフタヌーンティーの話題にでも出してみるよ
そんな日が来るまで、何年歳を重ねても変わらない二人でいよう
何年歳をとっても、今と変わらずこの向日葵のように笑うお前でいて欲しい
「誕生日おめでとう、リン」
『ありがとう!クラピカ!』
一輪の向日葵に頬を寄せ、咲いた笑顔は何度でも君に恋させる。
END
→後書き