春の向日葵
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本当なら仕事は一日だけのはずだった。
しかし、帰ってくるはずの日に帰ってこず
旅行への出発予定にも間に合わず
連絡も取れず…………
わかってる、本当は
クラピカは約束を破って平気な人じゃない
きっと急な仕事が入って、どうしても抜けられなくて
連絡する暇もないくらいずっとずっと忙しかったんだ
わかってる
でも…………
一緒にいたかったんだよ
生まれてきた日を、お祝いして欲しかったんだよ
ただ傍で
隣で
「おめでとう」って笑って欲しかっんだよ
私、ワガママなんだもん
『クラピカ……ごめんね……』
リンへのプレゼントを必死に捜し歩くその後ろ姿。
胸がぎゅっとなる。
どんな素敵なものにも納得しない完璧主義なクラピカが、酷く酷く愛おしい。
クラピカは有名なネコのキャラクターの専門店で、神妙な顔をしながら1番大きなぬいぐるみを手に取っている。
『ふ、あはははっ!もうクラピカってば!
ぬいぐるみなんて私、集めた事もないのに』
よっぽど切羽詰まってるんだろうなぁ
リンはとっくに絶を解いていたが、クラピカはまだ気づく気配はない。
その店も、結局は何も買わずに出てしまった。
辺りは少しずつ暗くなってきて、街灯にもポツリポツリと明かりが灯り始めた。
クラピカはしきりに腕時計を気にし、内心焦っているのが手に取るようにわかる。
この時間になると、雑貨屋なども店を閉めるところが多い。
クラピカの肩がゆっくり上下し、溜め息をついたのがわかった。
このままじゃ申し訳ない。
もっと早く声をかければよかったと後悔しながら、リンはクラピカの元へ向かった。
きっとあの酷い留守録も聞いての事だったろうから、それも謝って全部やり直す為に。
しかし。
クラピカがまた店の前で立ち止まったのだ。
もう閉店間際の小さな花屋だった。
クラピカは今までずっとその眉間に刻んでいたシワを収め、曇りの晴れた表情で店先に残った花の前にしゃがんだ。
見つめる先には、季節外れの小さな向日葵。
売れ残っているのは僅か一本だった。
「すまない、これを」
「はいはい。まいど」
店員が直ぐさまやってきて、向日葵を包んでくれた。
ちゃんとプレゼント仕様に、可愛いリボンまでつけてくれた。
クラピカはそれを受け取ると、ほっと息をつき
……少し寂しそうな顔をしながら店を出た。
そして、店の前の人影に気づき、顔を上げると―――――
『お帰りなさい、クラピカ』
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