春の向日葵
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どんなに沢山の人の中でも、瞬時に彼を見留める事ができるのはもはや特技と言ってもいいくらいだ。
リンは条件反射で絶状態になる。
べ、別に声をかければ済む話なんだけど……
なんでこんなとこに?
仕事は?
いや、「浮気かな!?」なんて疑いはもう絶対持たないと決めている。
だが様子がいつもと違うのだ。
暗い表情、考え込む仕種、キョロキョロと挙動不審で落ち着かない。
いつものクラピカらしくない。
『……どうしたんだろ?』
カフェに入るのは中止にして、クラピカを見守る(断じてストーカーではない)事に決定。
絶を継続したまま、リンはクラピカの動向を追った。
クラピカは仕事にいつも着て行く青いクルタ族の衣装のままだ。
いつも立ち寄る書店や骨董品のお店には目もくれず、ずんずんと足早に歩いていく。
かと思えば急に立ち止まり、食い入るようにショーウインドーの動物達を見つめたり。
な、何やってんだろ、クラピカ……そんなに動物好きだったっけ??
数十メートル後方で柱の陰に身を潜めながら、リンの頭上には隠し切れないクエスチョンの嵐。
クラピカは暫く愛らしい犬猫達を眺めた後、またどこかへ歩き出した。
てゆーか歩くの速いっ!
よくこんな人込みの中で誰にもぶつからずにあのペースを保てるな!!
リンは追うのにすら苦労していた。
次にクラピカが足を止めたのはCDショップの前。
じっと入口のポスターを見て、一度店内へ入ろうとしたが………
やめた。
また歩き出す。
不可解な行動である。
何が彼を引き止めたのだろうか。
『ちょっとちょっと~~~何がしたいんだぁ??』
だいたい仕事が終わったならこんなとこブラブラしてないで真っすぐ家に帰ってきてくれればいいものを。
まぁ、今帰っても自分はいないが。
『何が目的なの!?』
理解できずにイライラが募るリン。
しかし、さすがに次の店を見て、鈍感な彼女もクラピカの目的を察した。
クラピカが看板を見るなり迷わず入って行ったのは宝石店。
『……え……もしかして……』
まさか……誕生日プレゼント!?
私に買って帰ろうとしてるの!?
そんな事とは予想もしておらず油断していたリンは、驚きと喜びでクラピカにダイブしたい気持ちを必死に抑えた。
ぎゃああんクラピカ!!やっぱり大好きっ!!
ウズウズしながらそーっと店内を覗き込む。
はたから見たら変な女。
クラピカはゆっくり店の中を一周し、きらびやかなショーケースを見つめては離れ、見つめては離れを繰り返す。
宝石店とは常に客が大勢いるという場所ではない。
そうこうしているうちに店員の女性に声をかけられた。
『ああぅ……キレイな人……あんま近寄んないでよ……』
自分の為に選んでくれているとはいえ、それとこれとは話が別。
リンの心はあっという間に嫉妬でドロドロに。
忙しい女である。
クラピカは店員の女性に勧められるがまま、次々と商品を手に取り、吟味している。
イヤリング…ネックレス…ブレスレット…アンクレット…指輪…時計…
選ぶ表情は真剣そのもの。
しかし…………
『それはいらないよクラピカ~……どれもいらないよ~……』
何故なら………
既に生まれた時から天然の宝石達が身体に付いているからです!!(泣)
という思いを必死に念じていたらば、それが通じたのやら違うのやら、クラピカも思い出したようにあっさりお勧めを拒否して店を出た。
店員女性の残念そうな顔。
リンはちょっぴりスッキリしていた。
『さて、次はどこへ行くつもりかな?』
いつしか、あんなにイライラしていたのが嘘のように心はワクワクしていた。
クラピカがあんなに悩んでいる。
自分の為に。
何だかとっても嬉しい。
『えへへへへっ』
ニヤけが収まらない顔を、一応周りの目を気にして両手で隠す。
クラピカはリンの尾行に気付いていない様子。
その後もいくつかの店を一人で行脚し続けた。
有名ブランドの専門店、行列のできる洋菓子店、オシャレなブティック、アロマテラピーの専門店、ワインセラー………
どれも決め手に欠けるらしく、暫くして何も買わずに出てしまった。
『……クラピカ……疲れてるはずなのに……』
クラピカはまだ店を回るつもりでいるようだ。
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