彼氏・キルア・24時ー後編ー
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最後のいきみは深海に潜ったかのように長かった。
部屋の中には沈黙が流れる。
それを切り裂いたのは
リンが息を吐いたのと同時に上がった
元気な泣き声だった。
「……ぎゃあ……ほぎゃ……ふぎゃああっ……」
『はっ……はぁっはぁっはぁっ……う、生まれた……』
肩まで出ていた赤ん坊を、リンは自分で取り上げた。
『赤ちゃん……元気だ……ふ……あっ!女の子!』
生まれるまで遂に性別がわからなかったその子は、なんと女の子だった。
まだ真っ白な我が子を、胸元にしっかりと抱きしめる。
『よかった……よかったよぉ~~~!うぇ~~……』
張り詰めていた緊張の糸がプッツリと切れ、泣き出すリン。
本当は心細くて怖くて、出て来なかったらどうしようかと死ぬほど心配していた。
それがこんな状況でラタルの時よりも短い時間でスムーズに無事出産。
とにかく安堵に全身の力が抜け、気を失いかける程だ。
『キルア……ありがとう……』
目を閉じ、呟くように言う。
返事がない。
『キルア……?』
目を開けてキルアの顔を見ると、魂が抜けたように放心状態で固まっている。
『キルア?』
「……………」
『キルアってば!大丈夫?』
「…………あ………ああ…………」
何を思ってそんな状態なのだろうか。
とりあえず、まだやる事は沢山ある。
『ねぇキルア、臍の緒を切りたいんだけど、洗面台にあるハサミを焼いて消毒してから持って来てくれない?
それからバスタブでこの子洗って来て。ちゃんと首支えてね。
私は自力で何とか後産に挑戦してみるから。
二階の寝室に私の着替えと赤ちゃんの産着も買ってあったんだけど持ってきて欲しいな。
あと、もう一度クラピカにも連絡お願い』
「………………え?」
リンの指示を、ポカーンと右から左に受け流すキルア。
頼りにならないにも程がある。
『ちょっと、しっかりしてよ!こないだキツネグマの出産に立ち会ったって言ってたじゃん!』
「あ…わ、わかってる……えっと、着替えな」
『まずハサミ!次湯浴み!それから着替えと連絡の順ね!』
「了解!」
……つーかキツネグマは関係ねーだろ
ちょっと我に返ってから思うキルアだった。
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