彼氏・キルア・24時ー後編ー
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「腹?トイレ?(こんな時に?)」
ちょっと不機嫌そうなキルアに、リンはブンブンと頭を振った。
『違う!なんか……キューッて収縮する……陣痛かも……』
ソファーに座り、苦しそうにうずくまるリン。
「陣……痛って……」
『う……いきなりこんな強いのくるなんて……』
キルアの顔からサーッと血の気が引く。
頭の中が真っ白になる。
「ど、どーすんだよ!?病院か!?」
『…私がジュエリストって知ってる掛かり付けの病院はすっごい遠くて……
ホントなら予定日一ヶ月前から入院する予定だったんだけど……』
「言ってる場合かよ!!とりあえず近場の病院に行こうぜ!」
『何ゆってんの!!!ジュエリストってバレたら大変なんだよ!?命狙われるかもなんだよ!?昔からそれ隠すのに必死だったんだから!馬鹿言わないでよね!!』
いきなり物凄い剣幕で怒鳴られ、キルアは思わず肩を竦めた。
「じゃあどーすんだよ!?」
『クラピカに……うっ……痛……』
「おい、大丈夫か!?」
キルアはすぐにクラピカに電話を掛けるが、忙しいのか繋がらない。
一応メールを入れておく。
『多分……明日の朝には帰って来るはず……』
「それまで持つのか!?てか病院に向かおうぜ!」
『無理……飛行機だもん……あっ、また来た!うう~………』
既に5分間隔だ。
痛みもどんどん強くなる。
そんな時。
『あっ!破水~!!』
「あ!?」
湯水のように熱い羊水が、パチンという音と共に漏れ出した。
「おまっ!!ちょっ……どうすん……」
『とりあえずタオル!』
「つか病院行こうぜ!」
『無理!ここで産む!』
…………………。
い、今なんと?
「……病院……」
聞き違いだろう
いや、そうに決まってる。
恐る恐るキルアは同じ言葉を繰り返してみた。
『無理、持たない!ここで産むから準備して!』
は…母は強し!!!
腹を括ったら何と切り替えの早い事か!
リンはソファーの上にバスタオルを何枚も重ねて敷いた。
「な……何言って……こんなとこで産めるわけ……」
『いいからタオル!沢山ね!あとバスタブにでいいからお湯溜めて!
あっ……また来た……
腰!腰さすってーっ!!』
言われた通りに腰をさするキルア。
見た事のないくらい悶絶するリンに、内心はかなりのパニック状態である。
一時苦しんだと思うと、波が去ったら急にシャキンと復活する。
『今のうちに早くタオルとお湯の準備!!』
軍曹並の命令口調でキルアに指示する。
キルアは成すがまま言う事を聞き、人生初かというほど大慌てで右往左往する。
「他には!?」
『こ、腰~~!!きた、きたきたぁ!!』
「!!」
『ううう……ふぅ、ふぅ、ふぅ……い、痛い~~~!!』
ど、どうすればいいんだ!?
痛いというのは聞いてはいたが、こんなに苦しむものなのか!?
「おいリン、ラタルの時もこんなに痛かったのか?」
『も……もっと痛い!!』
てゆーか自宅で、しかもこんな頼りになる人がいない状態でっていう状況がもう不安!
つまり精神的にキツイ!!
というような事は、いくら苦しくてもキルアを気遣って言わない。
というより、言ってる余裕がない。
「大丈夫なのかよ!?やっぱ病院……」
『駄目……ちょっ……出る……』
「はっっ!!??」
いよいよパニック状態のキルアの手は、何がしたいのか空中でさ迷い踊っている。
ソファーに横になっているリンの傍らで、立ったり座ったり意味のない行動を繰り返しているキルアに、思わず笑いが出そうになる。
『も、もういい、キルアはとにかく手を貸して!私の枕元にいて!
こんな時に何だけど、絶対下には来ないでね!』
「わ、わかった!」
『で、手を握ってて!踏ん張るからね!!行くよ!!ん~~~~~~っっっ…………』
「…………っっ」
顔を真っ赤にして汗だくで踏ん張るリンに、釣られて息を止めてしまう。
リンの頭上で両手を固定しているが、まるでトラックにでも引っ張られているような強さ。
『………っはぁっ!!ハァ、ハァ、ハァ……んっ……行くよ!ん~~~~~~っ!!!』
既に間隔はほとんどない。
この踏ん張りを数回繰り返し、リンが一度自分の裾を確認する。
『もうちょっと……キルア大丈夫?』
「俺に構わず頑張れ!あと少しなんだな!?」
『はぁっ……うん!せーのっ!ん~~~~~っっ!!』
ラタルの時とは違って、出したいと強烈に感じる痛み。
リンはそれに合わせて、ありったけの力を込めていきんだ。
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