彼氏・キルア・24時ー後編ー
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キルアにこんなにドキドキしたのも
思えばキルアにこうやって抱きしめられたのも初めてだった
『キルア………』
涙が止まらない。
渡された小さな指輪の箱が、とても重く感じた。
" クラピカと別れて、俺と結婚して欲しい "
一生覆る事のない答えが、最初から出ていた。
それをキルアも、とうに知っている。
これから大切なお嫁さんを迎えるキルアには、「ごめん」の言葉が背中を押す事になるのかも知れない。
それが正しいのかも知れない。
でも―――――
キルアが本当に好きになった人と、幸せになって欲しいと願うのはワガママですか?
「リン…俺は多分一生お前が好きだよ。
ここでお前が気持ちのまま答えを出したって、何かが変わる訳じゃない」
いつまでも返事を紡げないリンを気遣って、笑って見せるキルア。
「言えよ、リン……ケジメつけてくれ」
何の可能性もないのはわかってた
けど、人生で最初で最後
永遠の人にプロポーズしてみたかった
もう満足だ
『キルア……キルアが……』
「うん」
静かに瞳を閉じるキルア。
覚悟して自ら望んだ鉄槌を待つ。
しかし、リンの答えは思ったものとは違っていた。
『キルアが……幸せじゃなきゃ……嫌だ……!』
そこまで漸く言葉を紡ぐと、リンは涙をボロボロ零して号泣した。
昔、クロロとの最後の電話で
『無理に忘れようとなんてしないでね。ずっと好きでいていいよ』
私はそう彼に言った
彼は私を忘れないと思ったし、私も忘れて欲しくないと思った
でもキルアには言えない
キルアはクロロとは違う
私じゃなくて、キルアにはちゃんと愛し愛され幸せになれる相手が現れる
キルアを好きになって大切にしてくれる人がいる
こんなに一途で温かい愛情をくれる人だもん
だから―――――
『私がプロポーズ断ったら結婚しちゃうんでしょ?じゃあ返事は一生保留だもん!!』
リンは乱暴にキルアの手に指輪を突っ返した。
「なんだよそれ……」
『キルアはちゃんと好きな人と結婚してよ!
キルアは絶対、絶対誰かを幸せにできる人なんだから!』
「俺が好きなのはお前だっつの!!」
『私の事は忘れてよ!!』
「!!」
キルアにとって、これ以上ない辛辣な言葉だった。
思わず涙が出そうになり、リンから目を逸らす。
「…忘れられるなら、15年前にとっくに忘れてる…っ」
『未来を諦めないでキルア!これからも沢山の人と出会うんだよ。
どうして愛せる相手が現れないなんて言える?』
「お前がクラピカ以外を一生好きにならないって誓えるのと同じだ!俺にとってはお前がそうなんだよ!」
刺すように残酷なリンの言葉。
キルアの瞳に留まっていた涙の雫が、床に散った。
「なぁリン……受けて貰えるなんて思ってねぇから、ただケジメとして答えをくれ。
そして俺がお前をずっと好きでいる事を許して……認めてくれ」
リンの手を強く握り、かすれた声で訴える。
「叶わなくたって、お前を好きなだけで幸せだったんだ」
『キルア……』
リンは涙でぐしゃぐしゃになりながらキルアの体を抱きしめた。
『キルア……キルア、キルア、キルア……!』
堪らない
キルアに何もしてあげる事ができない
悲しくて涙が止まらないよ!
「……泣きてーのはこっちだっつの」
リンの頬を濡らした涙を両手で拭い
キルアはリンの額にキスをした。
『いたっ』
「え?」
急に顔を歪ませるリンに、額に傷でもあったのかと確認するが見当たらない。
『お……お腹……痛い……』