クリスマス2009
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日が傾き、肌寒くなる時間帯。
今日は仕事の都合上、車を使わず出勤した。
地下鉄を降りて地上に出ると、調度通りがかったゴンに遭遇した。
「あっ、クラピカ」
「偶然だな、ゴン」
二人は並んで歩きながらも俊敏に人込みをかい潜りながら家路を急ぐ。
「久しぶりだな。変わりはなかったか?」
「んー、最近は仕事しながらG・Iに対抗するようなハンター専用ゲームを考えたりしてる」
「それは凄いな。キルアと二人でか?」
「他にも仲間を集って、今は六人でやってるよ」
「楽しそうだな」
「うん!毎日凄く充実してる!」
笑顔でそう答えるゴンに、クラピカはふと違和感を感じた。
「…珍しいな。ゴンからそんな言葉が出るなんて」
「え?そうかな」
「ああ。貪欲な好奇心を持ちながら満ち足りない事を感じないような奴だと思っていたのに。
充実していると気付くなんて、何か逆に不満を感じる経験でもしたのか?」
「…………」
クラピカの問い掛けに、ゴンは「う~ん」と真剣に唸り始めた。
「クラピカ鋭い…」
「何かあったのか?」
心配そうなクラピカに、ゴンは少し気恥ずかしそうに口を開く。
「あのさ、クラピカは、リンが初めて好きになった女の子なの?」
「!
……ああ、そうだが…」
意表をつく質問にクラピカは驚いて目を見開く。
「随分急だな…誰か想う相手でも?」
「ん~~~~~~…………………いや、違うんだけど……実は……俺さ、今まで何人か女の子と……付き合った事とかあるんだけど……
付き合ってる間ってさ……何か自分が小さい箱に入れられてる感じがするんだ」
しどろもどろと拙く言葉を繋ぐゴン。
「いつも窮屈なんだ。一緒にいる時はそうでもないんだけど、不思議と離れるほどそう感じる」
「なるほど」
クラピカは頷きながら相槌を打ってくれる。
ゴンらしいな、と思い、クラピカはその可愛らしい悩みに微笑んだ。
「それはお前がまだ本当に好きな相手に出会えていないだけさ」
「うん、それは思うけど…そもそも根本的に俺、誰かを本当に好きになれないんじゃないかな」
「何故そう思う?」
「んー、だって…」
ハンターになって15年、沢山の女の子とも出会って友達になったり
……それ以上だったり……
だけど、側にいる時以外
例えば仕事中だったり自由にキルアと旅している時だったり
……「好き」で繋がっているはずの相手の事を考える瞬間はないと言っても過言ではなかった
会いたいとか、電話をしてとか言われる度に煩わしくて
終わりが来るとホッとしていた
「やっぱり本当に嬉しい時に分かち合いたいのはいつもキルアだし…それ以上の存在なんてわかんないや」
「はははっ、そうか。
なら、悲しい時や辛い時は?」
「え?」
「自分が苦しい時、誰が浮かぶ?
誰に会いたいと思う?」
「それは……」
街の喧騒が遠ざかる。
二人で話しこみながら、いつしか家は間近だった。
――自分が苦しい時――
いつも浮かぶのは傷つけてきた人達や失った仲間……そして
「リンに……リンの笑った顔が見たくなったり、声が聞きたくなったりする。
でもそれって、好きって事なのかな……?」
ゴンの足が、止まった。
何も考えず、たった今思った事をそのまま口にしてしまった。
「……ゴン」
「ごめん、クラピカ!俺何言ってんだろ」
「謝る必要はない。ありがとう」
「なんで?」
「仮にそうだとしても、お前ならリンも喜ぶ」
寛大な言葉に顔を上げると、優しい微笑みがただ穏やかにそこにあった。
「だが……やはり違うと思うぞ」
苦笑いを浮かべながら、クラピカはそれを抑えるように口許に手を添えた。
「へへっ…やっぱり?」
ゴンも頭を掻きながら気まずそうに笑った。
――一瞬、そうであればいいなぁと思った。
これが恋なら、万事解決のような気がした。
だけど……
"リンとの絆は恋より深い"
何だか、この気持ちに恋という名前は相応しくないと思った。
もっと安定感のある居場所……
「……風が冷たいな。早く家に入ろう」
「うん!」
あのとびきりの笑顔は
そうだな
敢えて言うならオアシス。
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