君と共に(リク)
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あの日……
ノストラードの屋敷で私の部屋を訪ねたお前は
俯きながら泣いていたな
私とお前を繋ぐ素晴らしい命が
その体に宿った事を報せに来て――――
本当に嬉しかった
幸せだった
一族に託されたこの血を引き継いでいける事はもちろん、自分が父親になる日が訪れるなんて考えてもいなかったから
そして何より
リンと私の子供
これ以上ない程に愛しい存在
未来が一気に輝いた
何があっても、必ず二人を守っていこうと心に誓ったんだ
それなのに
一瞬後にはまた残酷な真実
"子供が胸に赤い宝石を携えた女の子なら、リンは死ぬ"
―――おかしいと思ったのだ
幸せすぎると
本当は怖かった
いつか必ずこの幸せは終わる日がくると
……確信……していたから……
『クラピカ~見て!海だ!!』
妊娠七ヶ月になったリンを久しぶりにドライブに連れ出し、ハイウェイを走っていた。
ふと気を抜けばジュエリストの信じたくない伝説が思考を支配する。
助手席のリンが眠っていて静かだったせいもあり、また闇に心を引き込まれていた時。
たった今、目を覚ましたらしいリンの元気な声でハッと我に返った。
『ねぇ、ちょっと寄りたい!海寄りたい!!
足漬かるだけだから!大丈夫だから!
あ、じゃあ砂を裸足で歩くだけ!
見るだけ!風あびるだけ!』
まだ何も言っていないのに勝手に私の返答を予想し、一人で会話をするリン。
しかしあながち外れてもいないが。
「海って…一月だぞ。体を冷やす。駄目だ」
『う~~ちょっとだけ!』
「母親だろう、自覚しろ」
『ストレスが1番悪いって先生ゆってたし!』
「風邪を引いたらどうするつもりだ?薬も飲めないのに」
『……風邪、引かない』
「却下」
『う~~~!!』
子供のように膨れる様が何だか可愛い。
そんなリンを見るだけでいとも簡単にグラグラと揺れる心が自分でもびっくりだ。
いつもならもっと我が儘に騒ぎ立てるリンだが、例のクロロとの逢瀬から少し考えるようになったのか、我慢する事を覚えたようだ。
でも内心を手に取るようにわかる。
そわそわと落ち着かない体。
窓に張り付いて食い入るように海に見入っている。
……私はもう病気だな。
そんな姿がどうしようもなく愛しくて、次に考えるのは彼女の願いを叶える術。
どうやって体を守りながら海を歩こうか。
……たまに思う。リンを愛してから、私は随分馬鹿になった。
「後ろに毛布をつんであったな。
それにくるまっていけ。人目より体が大事だ」
『……え……いいの?
海、行っても……』
「少しだけだぞ。まだ暖かい時間だし、お前も遠出は久しぶりだしな」
『あっ、ありがとう、クラピカ~~!!』
ぎゅーっ!!
「ばっ…よせ、高速だぞ!ふざけるな!」
『好き!!クラピカ大好き!!』
「わかったから…」
たかが海で。
私の内心はそんな感じだったが、リンは涙目で大はしゃぎ。
近くの降り口へ下り、人気のない浜辺へとやってきた。
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