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「……拭いただけでは落ちないな」
消えそうな声で呟くように言うと、クラピカはリンの手を離した。
『いいよ。大丈夫』
こちらを見ようとせず、顔を逸らすクラピカに、リンも瞳を伏せた。
二人の間に流れる空気が、酷く重い。
「…お前は…ずっとこんな風に生きていくつもりか?
旅団との事は私自身の問題だ。こうしてお前を巻き込む為にお前を傍に置いてるわけじゃない。
私の為に…私のせいで、お前が手を汚した事を私が喜ぶとでも思うのか。
お前がずっと自分を…犠牲にしていかなければならないなら…お前がどうしても見て見ぬ振りができぬと言うなら…
これ以上お前を傍に置く事はできない」
クラピカは拳をグッと握り、顔を逸らしたままで言った。
リンはそれでも冷静だった。
『そんな風に生きてくのかって…キルアにも以前、訊かれたよ。
私はその時イエスと答えた。それは今でも変わらない。
こんな事してもクラピカは辛いだろうってのはわかってる。
でも、もう一度さっきのあの瞬間に時間を戻せたとしても、私は同じ事をする。
クラピカが耐えられないってんなら私はクラピカの傍から離れるよ。
でもずっとクラピカの事は見てる。クラピカを傷つけるモノは全部排除するし、離れたからって私の行動は今までと何ら変わらない。
クラピカの心と未来を守りたいんだ』
リンは曇りのない表情で、真っ直ぐにクラピカを見つめた。
その眼差しを受け止め、クラピカは静かに理解した。
あの無垢で泣き虫なリンが、こんな風に手を血に染めても、少しの動揺も見せない理由を。
―――覚悟
リンはいつも、心に一つの覚悟を持っている
私を守る………と
試験中から何度も宣言していた、あの決意を
クラピカは瞼の奥がジワリと熱くなるのを感じた。
「…リン、私はお前に…何をしたらいい?何を返したら、私は…」
『何も。ただ生きてそこに存在してくれたらいい。他には何もいらない』
リンはゆるやかに微笑んでみせた。
私が一番望む事は
クラピカが何も考えずに心から笑える日が来る事
平凡な幸せと、平凡な悩みと、明日への希望
穏やかな朝を迎え
温かな夢を見て眠る
ただ、そんな人生を送ってほしい
そこに復讐の炎は存在しない
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