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広い荒野を、強い風が吹き抜けた。
クラピカは目の前の信じられない光景に、言葉を失って立ち尽くしていた。
倒れた旅団の大男の目の前に、息を切らせて佇むリンがいる……
返り血を浴びて、腕を真っ赤に染めて
リンは黙ったまま事切れた敵を見下ろしている。
「……リン──?」
クラピカは、掠れた声でやっとその名を呼んだ。
リンはゆっくりと顔を上げ、クラピカの方へ振り返る。
『…クラピカ…私…こいつを……
殺しちゃった………』
リンは赤く染まった自分の右手を、虚ろな瞳で見つめた。
クラピカはリンの元へ駆け寄り、自分の服でリンの手についた血を拭き始めた。
言葉にならないほど悲痛な表情で、震える手で、必死に擦り続けた。
「…何故、ここへ来た…?
あれほど言ったのに…何故っ…、お前がこいつを……!」
…泣いてるの…?
そう思ってクラピカの顔を覗き込んでみるが、その瞳に涙はなかった。
『邪魔してごめん…私はクラピカの命が心配で、ホテルからここまでつけてきたんだ。闘いも全部見てたよ。
クラピカがこいつを捕えた時は、「これで闘いは終わりだ」って…クラピカが無事だった事をすごく喜んだ。
だけどさっき、クラピカが戒めの楔をこいつに刺した時に、こいつの顔を見てわかったんだ。死んでもいいと思ってるんだって……
だから私は…クラピカに人を殺してほしくなかった。
もし今日の事が旅団にばれても、こいつを殺したのは私なんだから、クラピカは狙われる事はないだろうと…思った』
深く俯きながら、それでも決して嘆いている様子ではなく、リンは至って落ち着いていた。
そうだよ
私はクラピカを守りたかった
クラピカの命も心も……
クラピカは優しいから
例え仇でも殺してしまったら、きっと一生それを背負って苦しみながら生きていく
そんなのは絶対嫌なんだ
代わりに返り血を浴びてでも、クラピカを守りたかった
悪夢に苛まれないよう…優しい朝を迎えられるよう…
誰かに狙われる明日なんて来ないよう…
私で代わりになれるなら、全て請け負いたいと……
―――リンは、生まれて初めて人を殺した。
鎖に縛られ、身動きの取れない人間を、ひと突きにした。
血に染まった手が、まるで自分のものではないようで、夢でも見ているような気がする。
クラピカは、ただただ黙ってリンの血を拭い続けた。
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