柔らかな風
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クラピカは何を言っているのだろう……
私、自分の願望を幻にして見ているのかな……
ねぇ嘘だよね
クラピカ――――
「最終試験の日、お前に口付けたのは同情などではない。
私がお前を愛しくて……ただ抱き締めたかっただけだ―――」
クラピカの話を黙って聞いていたリンは、静かに、ただ涙だけが溢れだして止まらなかった。
「リン…」
優しく名前を呼ばれ、温かい指が髪を撫でる。
何故だろう、その全てが素直に納得できない。
こんな事、あるはずがない。
『ねぇ……ホントは嘘なんでしょ?私の為に……嘘ついてるんでしょ……?』
顔をくしゃくしゃにして泣き出すリンに、クラピカは胸を締め付けられた。
「随分信用がないようだな、私は。そんな嘘をつくほど私は優しくはない」
『でもっ……これで信用して、次に離れなきゃなんなくなった時は……
もう乗り越える自信ないよ……』
リンが震えている。
こんなに辛い思いをさせていたなんて───
クラピカはリンを強く抱き締めた。
『うぅ……クラピカ……』
「二度と私はリンから離れない。今ここで誓う。絶対だ。
他になんと言えばいい?
どうすればお前は……っ」
『クラピカ……』
夢にまで見たリンを、ただ強く強く抱き締める。
愛しくて愛しくて
苦しい程切なくて……
この先お前を離せないのは……私の方だ
「お前に傍にいて欲しい。だから……二度と会わないなどと言うな」
クラピカの腕に、一層力が篭る。
夢じゃないのかな?
私、本当にクラピカに………
会いたくて会いたくて仕方なかった
本当は死ぬほど寂しかった
今、こうして腕の中にいる事は、私にとって奇跡だ
だけど………
もう限界っっ!!!
『あ、あの……もう離れていいでしょうか?』
リンはそそっとクラピカの胸を押して離す。
「嫌……なのか?」
予想外に悲しそうな顔で言われ、リンは首が取れんばかりに思い切り振って否定した。
『いやっ!!死んでも有り得ないけど!でもね、苦しくて!!
ドキドキしすぎて息ができないの!!もう心臓が持たないってゆーか!!』
半ば目を回しながら、わたわたと申し訳なさそうに慌てているリン。
それを見てクラピカは安心したように笑い、
「それならば慣れていけばいい」
と言って、もう一度リンを抱き締めた。
『クラピカ、クラピカ、ホントにもう……酸欠……』
リンの顔は真っ赤で、ゼーゼーと息切れしている。
「少しの間このままでいさせてくれないか。
……もう目覚めて消える夢は沢山だ」
クラピカの温かい腕の中で聞いたその言葉は、リンの心の傷を一瞬で全て消し去ってくれた。
『クラピカ……私も夢はもう嫌だ!!』
リンもクラピカの胸にしがみつく。
先程までとは違う、温かい涙が溢れだす。
サラサラと柔らかい風が、二人を包み込むように撫でていった。
それは二人にとって
とても幸せで、とても優しい時間だった。
そう、この先に何があろうとも
この時だけは、確かに世界は二人の為にあったのだ―――
~続く~