柔らかな風
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「少し落ち着け。こないだとは、最終試験の日の事か?」
『そーだよっ!!』
顔を真っ赤にして、リンはやけくそに続けた。
『私が泣いてたから傷付いてると思って、クラピカがしてくれた事!
意味はないって私ちゃんとわかってるから気にしないでって事だよ、簡単にまとめると!』
それを聞いた途端、クラピカの表情が変わった。
きつく眉を寄せ、見るからに怒りの色がどんどん溢れてくる。
「勝手にまとめるな!!」
突然のクラピカの大声に、リンはビクッと肩を跳ねさせ、固まった。
クラピカの瞳が、うっすらと緋色に染まっている。
『えっ……あの……』
それを見てリンは戸惑い、後退りした。
クラピカの瞳から目が離せない。
「何がわかっているだ!一体何をわかったつもりでいたんだ。私の気持ちか?
残念ながら全く的外れだ。お前が……いや、お前にそんなに伝わっていなかったとは……」
クラピカの辛そうな顔……
どうして!?
こんな顔をさせない為に、私はクラピカにもう会わないようにしようと……
『ホラ、やっぱり会うといつもクラピカにこんな顔させちゃうもん。
だから私、もうクラピカに二度と会わないようにしようって……決めたんだよ……』
リンの目からまた涙がこみ上げる。
どうしていつも私は
彼にこんな顔をさせてしまうのか……
いつだって誰より想っているのに
「……違うんだ。
私の方がいつもリンを泣かせてばかりではないか。お前を…こんなに大切なのに…」
『クラピカ……優しすぎるよ。私は十分すぎる位大切にしてもらったから、もう気にしないでほしい。ホント、ありがとう……』
「!!そうではない!私は………」
はっきりと言ったのに、全く意味が伝わっていない様子。
これ以上、どう言えばいいのだ?
言葉は沢山あるのに、伝えたい想いは肝心な時に言葉にならない。
クラピカがあれこれ考えている間に、リンがまた口を開く。
『私はクラピカに会えただけでホントに幸せだよ。側にいなくても、クラピカの存在がずっと私の支えになるんだよ!
だから何も気にしなくていいんだよ……』
ほら、またそうやって
お前だけが私を守ろうとする
違う…そうじゃない!
私は……
「……お前がいなくなって今日まで……何度もお前の夢を見た」
どう伝えればいいのか分からないのは、きっとどこかで自分の矜持を取り繕おうとしているからだ
リンがいつも伝え続けてくれたように
私も私なりに、正直にこの胸の内を伝えたい―――
クラピカは真っ直ぐリンに向かい合い、その瞳を見つめて静かに言葉を続けた。
「…何度も葛藤した。私にお前を想う資格などあるのだろうかと。
ましてやそれを伝えたところで、お前を幸せにする事ができるのだろうかと。
……何度も何度も自分に呼び掛け、問うてみた。もちろん答えなど出ない。
だが私は気付いたのだ。何を考えたところで、私の気持ちは消す事も変える事もできないのだと」
『クラピカ…』
リンはクラピカの視線を受け止め、その口から次々に紡がれる信じられない言葉を、ただ夢の中にいるような錯覚を抱きながら聞いていた。
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