柔らかな風
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リンは執事の館を飛び出し、ただがむしゃらに走った。
向かう宛てなどあるはずもなく、とにかく逃げるようにひたすら遠ざかるだけだった。
クラピカの冷たい声が耳に残って離れない
嫌だ、クラピカに冷たくされたら……嫌われたら、私は生きる意味なんかきっと無い!
「リン、待つんだ!どこへ行く気だ!」
『!!』
追ってきたクラピカの声に動揺し、リンは思いきり躓いて派手にすっ転んだ。
『ぎゃわっぷ!!』
倒れこんだリンの動きが、ネジが切れた人形のようにそのまま停止した。
クラピカは、なかなか見ることのできない位、素晴らしく派手な転び方を見て、思わず笑いを堪えながらリンに歩み寄った。
「……大丈夫か?でもよかった。このまま逃げられてはとても追い付けはしなかった」
リンの両腕を引っ張り、体を起こして立ち上がらせる。
少しぶつくされた顔は、草や土で真っ黒になっていた。
クラピカはまた笑いそうになるのをグッと堪え、リンの体や髪をパタパタと払ってやった。
「…で?何故また逃げ出したりしたんだ?」
さっき執事室で聞いた声とは違い、今度はいつものクラピカの声。
むしろ、それよりも少し優しい位だ。
「会場からも黙って消えてしまうし……お前が何をしたいのか、いまいちわからんな」
リンは俯いたまま、クラピカの顔を見ようとしない。
「私には何も話す気にならないか。追うのはキルアの方がよかったか?」
『なっ!!そんな事ない!
……でも……迷惑かけて……ごめん……』
ようやく返事をしたものの、またすぐに俯いて唇を噛みしめるリン。
「やっと私に声を聞かせてくれたな」
柔らかく降ってきたその言葉に、ハッと顔を上げると
そこには初めて見るような、穏やかな微笑みがあった。
「で、迷惑とはいつの話だ?どれの事だ?」
『あ、いや……全体的に……
私……がいると、クラピカは自分を犠牲にして私を助けて……くれるし……』
「私がいつ?」
『いつもだよ!……出会った時もそうだし、試験の時も何回も。
……それに、こないだだって………
ホントはしたくないのに、同情したんでしょ……』
話しながら、リンの目にみるみる涙が溜まる。
「こないだって……」
『いや、いーの!わかってるの!!クラピカは優しいから、ずっと一緒だった私の事、放っとけなかったんでしょ?
それでも私は救われたからいいんだけど、クラピカにとっては、いつも私って、迷惑にしかなってないから!!
だからね、もう心配しなくていいように私、自分で頑張ってみようと思う!!』
昂った感情のままに、リンは強い口調で一気にまくし立てた。
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