溢れる想い
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初めて会った時から、あの娘は泣いていた――――――
雨の中
濡れながら地面に突っ伏して、ひたすら泣いていた彼女
その姿が何故だか昔の自分と重なり、同じように雨を浴びて立ち尽くす私
リンに明かされた彼女の身の上の事情は、まるで自分と同じで驚いた
広い空の下、天涯孤独に生かされ続ける忘れ形見のような人生が、痛々しくて哀れだった
だが歳は二つしか変わらないのに、リンはとても素直で正直で、無垢だった
再会した時もそうだ
私を見つけるなり大声で呼び止め、子供のように飛び付いてきた
会いたかったと涙を浮かべ、微笑んで…
そんなリンの事が可愛くて、放っとけなくて、心配だった
せめてこの手が届く場所にいるうちは、守ってやりたいとすら思っていた
そんな無責任で甘ったれた私の考えが、あんなにもリンを追い詰めたのだと
今ならわかる
好きだなんて言われても応えられるはずがないのに、どうして私は…
拒絶するしかなかった
どう考えても、答えはひとつだった
"リンを受け入れる事はできない"
―――いつしかリンの笑顔も泣き顔も見るのが辛くなり、私は彼女から目を逸らすようになった
どれだけ突き放しても、リンは変わらず真っ直ぐだった
三次試験のタワーでも、
四次試験のゼビル島でも、
最終試験でも―――
いつもいつも私の事を思い、私の為にいた
眩しい位純粋で
気持ちが嬉しくて
目が離せなくて
笑顔が可愛くて……
惹かれていたんだ
気付かないようにしていた
気付きたくなかった
それどころではないと、自分を諌めて、抑えて、隠して……
それでも、どうしても大切で────
もう隠す事はできなかった
キルアに「俺が守っていく」と言われた時に、「好きにしろ」とも「駄目だ」とも言えず、逃げてしまった
ヒソカに唇を奪われたのを知り、体中の血が全て頭に昇っていくようだった
目の前で泣きじゃくり、
『初めてのキスはクラピカが良かった』と言ったリン
もう抑えられるわけがなかった
心の奥から、奥から、
気持ちが溢れ出して、止まらなくなった
" 愛しい "
この娘の事が、どうしようもなく愛しい
私は、とうとう認めてしまったのだ
自分と葛藤しながら、それでも溢れてくる気持ちを無視するにはもう限界で、私はリンにキスをした
何度も何度も
優しいキスを重ねた
何故かリンの涙は止まるどころか更に溢れだす一方で
リンの頬に添えた私の指は涙で濡らされ続けた
"何故、私なのだ?"
それは何度も尋ねたかった事
"何故、私の為にそこまで―――"
……もし尋ねたなら、きっと彼女は笑うだろう
"決まってるよ!それはね…"
―――そんな風に迷わず答える姿が浮かび、問い掛けるのをやめた
問い掛ける代わりに、想いを込めて抱き締めた
もう二度とリンを離せなくなるかも知れないと不安になった
リンが何より大切な存在になるのが怖かった
それでも……
出会わなければ良かったなんて思わない
こんな気持ちになるなんて、少し前の自分は想像もしなかった
リンが教えてくれた
私は今、確かに幸せを感じているのだ───
~続く~