さよならの予感
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残り一分を切った。
「何?それじゃあリンはプレートを集められなかったのか」
「ああ。多分、みんなに顔を合わせづらくて、時間まで帰ってこないつもりだぜ」
「リンが…」
クラピカは一時俯いて口をつぐんだが、やがて何かを決心したように顔を上げた。
自分の為にプレートを差し出してくれたリンを差し置いて、のうのうと合格できようはずもない。
「私は、リタイアする」
「おい、クラピカ!?」
と、その時だった。
遠くから力強い足音がダダダダ~っと響き渡り、皆が注目する中で、森の方から現れたのは───
「リン!?」
「────!?」
汗だくで、ひどい顔で、必死に走ってくるその姿……
「残り、10秒です」
『のぁ~~~~~!!
間に合ったぁ~~~!!!』
髪を振り乱し、息を切らし、まさにギリギリで滑り込みをかましたリンの姿だった。
「おい、お前、間に合ったってプレートないんじゃ意味ねーだろ?」
リンは仰向けに倒れこんだままキルアを見て、ブイサインを作って見せた。
『プレート、見つけたよ!!
あたし……あたしまだ皆と一緒にいられる……!!』
涙目のリンの言葉に、キルアは「マジかよ!!」と、大喜びした。
協会側が通過者を確認した後も、リンはスタート地点の地べたに倒れこんだままだった。
クラピカはリンの側へ行き、黙って佇んでいた。
リンは目を閉じている。
「昨日コイツ寝てないからさ。眠ってんじゃねーの?」
キルアはそう言うと、ゴンと船に乗り込んでいった。
クラピカはリンの腕にそっと触れ、話しかける。
「リン、行くぞ。起きろ」
『うぅ……起きてるっつの……バカ……』
どうやら寝ぼけているようだ。
「誰がバカだ。早く起きないと置いていくぞ」
『あう……クラピカ……』
リンは寝転んだままクラピカの手に絡み付く。
『大好き~…』
そう一言、言った後はもう寝ている。
『すー…すー…』
「……わかっている」
クラピカは眠ったままのリンの体を抱きかかえ、船に乗り込んだ。
あの時
森の中から走ってきたリンの姿
キルアからプレートを集められなかったと聞いた時は、ヒソカにリンを預けてしまった事を心底後悔した
真っ直ぐな瞳で
純粋な笑顔で
『大丈夫』と言い
私を守ったリン
私は─────
ヒソカと闘う事なんかよりも、お前が来なかったさっきの方がよっぽど怖かったのだ
お前現れた時、本当に安堵した
いや、嬉しかった
私のこんな気持ちなど
……わかりはしないだろうな……
船の中のソファーに寝かせた、リンの寝顔を見つめるその姿に
キルアだけが複雑な思いでいた事を、今はまだ、誰も知らない。
~続く~