明日があるさ
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その日は一日中、場所を移しては身を潜め、暫くしてはまた場所を移すの繰り返しだったが、とうとう誰にも会わずに日が暮れてしまった。
「初日はこんなものか…まだ日があるから焦って出ては来ないだろうしな」
『………』
リンは黙ったままだ。
「いい加減に口を利いたらどうだ?意地を張ってるつもりか?」
『違うもん…』
リンはあれから初めて口を開いた。
「大丈夫だ。プレートはちゃんと集める。心配するな」
『そんな心配してないよ』
「じゃあ何だ。言いたい事があるなら言わないか」
『………』
リンはまたもや黙ってしまう。
だが、このまま暗い顔してたって、クラピカを困らせるだけだと思い直し、俯いていた顔を上げた。
『クラピカ……迷惑かけてごめんね。かえってクラピカにとったら面倒なんだよね。
私、ちゃんと一人でもプレート集めるから、もう行って』
リンはクラピカを見つめながら、微笑みを作って言った。
クラピカは真顔のままリンを見つめる。
『ホントだって!マジだよマジ!私、落ち込み易いけど切り換えも早いんだよ!もう大丈夫だから、だから行って!』
リンは必死でクラピカに去るよう促す。
クラピカはじっとリンの顔を見つめた後、静かに空を仰いだ。
もうすっかり暗くなって、星が綺麗に輝いている。
その美しい星空を眺めながら、クラピカは考えた。
今、言う通りここを去るべきなんだろうか
自分はどうしたいのか
この娘を置いて、自分の道を行くべきなのか
この娘が…リンが自分にとってどんな存在なのか……
クラピカは自分の心に問うた。
確かにリンの気持ちを聞いて、自分は応えられるわけがないと思った。
だがそれは、決してリンの事が嫌いだからという訳ではない。
出会ってから、再会してから今まで、自分はリンの事を迷惑だとか鬱陶しいなどと思った事は一度もないのだ。
気持ちを伝えられた時も……
――本当は嬉しかった――
自分の心と向き合い、改めて見つめ直す。
そこにある答えは、ただ至極シンプルで。
…そうだ
リンの為に今ここにいる訳ではない
私が、そうしたいからここにいるのだ
『ねぇ、クラピカ、聞いてる?無視?』
「何とでも言えばいいさ。私がいたいからいるだけだ」
クラピカは相変わらずまっすぐ星空を眺めている。
リンはやっぱりクラピカに申し訳ないという気持ちが拭えなかったが、こうして今一緒にいてくれてる事が本当に本当に嬉しくて、心強くて、何度も何度も心の中で感謝した。
『プレート、今日は見付からなかったね……大丈夫かなぁ……』
「明日があるさ。
二人なら何とかなる」
クラピカの綺麗な横顔が、満天の星空の下に、星よりも強く美しく、リンには輝いて見えた。
~続く~