ベールの向こうー後編ー
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そして四、五時間程漕いだ頃に、その島は現れた。
送りの者は一行を降ろすと、去る前にルビーに一礼をし、また国に戻って行った。
そこは明かりひとつない無人島。
積んで来た食糧と種、そして水。
苦しい生活が始まるのは目に見えていたが、皆はそれぞれの覚悟を持って二人についてきた。
支えあい、助け合って生きていこうと話し、ルビーは自ら皆の前でその地位を捨てた。
贅沢も何もない、頼もしい仲間、愛しい人との命懸けの毎日。
それはルビーにとって人生で一番幸せな日々だった。
どんなきらびやかな宝石よりも、一流の料理を食すよりも、贅沢なパーティーを楽しむよりも、心は満ち足りていた。
「ルビー!見ろ、こんな実がなっていたぞ!」
「ルビー!この珍しい植物の蔦でクロスが作れるわ!」
「ルビー、ここから海水じゃない水が湧いてたんだ!」
ルビーを守り、愛し、皆はそうして生きる事に喜びを見い出していった。
島に流されて二年。
何とか衣食住が整い、生活が上手く回り始めた頃、皆に嬉しいニュースが飛び込んだ。
ルビーに子供ができたのだ。
「ありがとう、ルビー!こうして家族が増えていけば、この小さな島でいずれ村や町ができるかも知れない!!」
当然ラフラスは大喜び。
ルビーも、自身に宿った新しい命と、皆の祝福に心から感謝した。
その日から皆は、彼女とお腹の子供を守る為に、今までより広く頑丈な家と、無事を祈る神殿を造る日々に追われた。
ルビーは毎日、国王から貰った宝石を撫でて子供の無事の誕生を祈った。
そして更に半年後。
ルビーは共に島へ来た女性三人に支えられ、出産の時を迎えた。
「ルビー、大丈夫か!?」
部屋を追い出される前に、ラフラスは青ざめたルビーに声をかけ、手を取った。
「ええ、私にはこれがあるから…」
ルビーは枕元に置いた大切な"リンクル・ダーク"を指さし、微笑みを作ってみせた。
全てを捨てる程に愛した人の子供を、今まさに産み落とさんという時
"リンクル・ダーク"が、ルビーの叫びと同時に光を放った。
光はみるみる膨れ上がり、島全体を包み込むほどにまで大きくなった。
「ルビー!!」
ラフラスは勢いよくドアを開け、小屋に入り、眩しい光の中にルビーの姿を探した。
しかし部屋にいた皆の姿は見えず、ただラフラスの目には輝くリンクル・ダークが天井高くまで浮き上がり、留まっているのが映った。
" ラフラスよ… "
「!?」
なんと、宝石の中から声が聞こえて来た。
それも自分の名前を呼ぶ声が。
「…誰だ!?お前は!!」
果敢に問い掛けるラフラス。
ルビーの姿が見当たらない。
ラフラスの胸に嫌な予感が広がる。
" 我はリンクル・ダーク
お前が国王や王妃からルビーを奪ったように、今度は我がお前からルビーを奪ってやろう "
「…何っ!?」
" そしてお前に呪いを与える……
百年前、我を堀り当てた国王の"念"によって
我が王家から離れた時には幸福が不幸に変わるよう決められていたのだ "
ラフラスの耳には、ただ「ルビーを奪う」という言葉しか聞こえていなかった。
「ルビーを…どうする気だ…!?」
背中に下げた剣に手をかけ、リンクル・ダークを睨みつけるラフラス。
リンクル・ダークの答えは…
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