ベールの向こうー後編ー
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『そんな…お父さんから折檻……』
リンはルビーの話を聞きながら、とても悲しい気持ちになった。
" そんな事は辛くなかった。お父さまを傷付けた事が辛かった "
そして彼と引き離されて会えなくなった事が────
ルビーは国王の自室で鎖に繋がれ、鞭で打たれ、涙ながらの怒声を浴びていた。
傷付けたのは辛かった。
だけどその時は彼と引き離された事が悲しくて、父に対する恨みもあった。
「ラフラスは…?ラフラスには酷い事をしないで下さい」
傷だらけになりながら尚もルビーは彼を想う。
国王はようやく手から鞭を投げ捨て、ルビーに背を向けて言った。
「その傷が癒えたらすぐ、お前は隣国の王子に嫁がせる」
それは父から初めて下された命令。
ルビーは動じる事なく答えた。
「わかりました。ならば私は今ここで舌を噛み切って死にます」
聞いた事もないような冷徹な声に、国王は思わず振り向き、ルビーの顔を見た。
その瞳は子供の頃から変わらぬ純真な輝きを持ったままなのに…
ずっと可愛がって寵愛を尽くしてきた娘が…
いったい今まで、何の為に?
国王は折れるか見限るしかなかった。
一度決めた事は絶対曲げない意思の強さ、頑固さは、親である彼が一番よく知っている。
国王はどうする事もできなかったのだ。
そして下した決断は、ルビーとラフラスにとっては願ってもない事だった。
国王は娘が心底憎く、心底可愛かった。
ルビーの願いを叶えてやりたい。
しかしあの男を城に迎える事などもってのほか。
公然と平民の家に嫁がせる例も残すわけにはいかない。
国王は冷静に考え、悩み、結論を出した。
ルビーを殺す。
王家の歴史の上から。
ルビーとあの男をこの国から追放する。
誰もいない島へと流す。
ルビーを守る為の付き人と共に。
国王の決断はすぐに実行へ移される事となった。
姉妹兄弟は嘆き、母の王妃は気が違う程に泣き喚いた。
絶望の淵に落とされ、娘を奪ったラフラスへの憎悪で血の涙を流した。
国王は去り行くルビーにある物を渡した。
王家に代々伝わる、世界にたった1つしかないと言われる宝石。
その名は"リンクル・ダーク"。
持つ者に大きな幸福か大きな不幸、どちらかを与える。
そう謳われ、王家では代々大切にされてきた。
実際、王家はこの宝石の加護により、繁栄と平和をもたらされたのだと信じられていた。
きっとルビーの航海の道を守ってくれる。
そう思い、最後の慈悲を与えたのだ。
小さな舟に一行を乗せ、送りの者が漕いで海へ出た。
ルビーとラフラスは固く手を握り合い、小さくなっていく祖国を見つめながら涙を流した。
「本当によかったのか?俺を捨てれば君だけは許されたろうに」
「そうなるくらいなら死んでたもの」
供の者は皆温かく二人を励ましてくれた。
皆がルビーを慕っていたからだ。
彼女の幸せを心から喜んでくれたのだ。
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