明日があるさ
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「お前は泣いてばかりだな。そんな状態で一人で生きてなどいけるのか?」
『わかんない…ヒック…
でも、もう何をしたらいいのかわかんない…ヒック…クラピカには受け入れてもらえなくて…ヒック、…会長にも、師匠の仕事は無理だって言われて…ヒック、…それでもクラピカを守るために生きようって…ヒック、
…決めたばっかなのに…』
クラピカは、嗚咽を漏らしながらも必死なリンの話を、黙って静かに聞いていた。
リンの心情を考えると、諦めたくなるのも無理はないと、本当はわかっている。
しかし、「ならば…」と背中を押す事はできない。したくない。
「私を守るといいながら、何故諦めたような事を言ったのだ?試験を投げるつもりか?」
『違っ…でも…ヒック、
…クラピカの獲物が私だってわかっヒック、わかって…
もう…いいやって…クラピカにプレート渡して、ヒック、…帰ろうと…
何もかも忘れて諦めた方が…いいって…ヒック…
思ったんだも…ヒック…』
リンの泣き顔に、クラピカの胸はズキズキと酷く痛んだ。
三次試験に向かう飛行船の中で、涙の跡を残したまま隣りに来て眠っていたリン…
元気がないリンに、ゴンが「疲れた?」と聞いて、「疲れた」と答えたリン…
そういえばずっと寂しそうだった。
気付いていた。
そういう事だったのか―――
そうだ。
リンはもうずっと長いこと、"独り"だったのだ。
「…すまなかった。リンにこんな思いをさせていたのは…私だな」
『止めてよ!!違うよ、謝らないでよ!謝られたら余計に寂しくなるんだよ!!』
クラピカは色々な励ましの言葉や慰めの手段が頭にいくつも浮かんだが、どれも今、この状況にはふさわしくないと思い、口をつぐんだ。
「大丈夫」だとか、
「みんながいる」だとか、
いくら真実でも、そんな言葉でどうにかなるようなリンの心ではない事位、わかっていた。
まして、「自分が傍にいる」なんて、無責任な言葉
例え相手が望んでいる事でも絶対に言えない。
「……わかった。
プレートは私がひとまず預かろう。だが、お前の獲物のプレートと残りの三点分を、必ず期限までに集めるんだ」
『……も、もういいって言ってるのに……』
「私が嫌だと言っている。私がお前に帰って欲しくないのだ。ここまで言わなければわからないか」
『クラピカ…』
泣き腫らして真っ赤なリンの目から、また大粒の涙が溢れ出す。
「泣いている場合ではないというに。とにかくこんな所にいては的になっているも同然だ。場所を移そう」
クラピカはリンの腕を引いて、足早にその場から歩き出した。
『(クラピカ…優しいね…)』
リンは、さっきの言葉がクラピカの優しさ以外、何物でもないという事をわかっていた。
だからクラピカを傷つけたのでは、という胸の痛みと、クラピカのその大きな優しさに涙が溢れたのだった。
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