ベールの向こうー前編ー
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その光で、徐々に互いの顔が見えるまでの明るさになった。
リンとクラピカは目を合わせ、同時にラタルを確認すると、ホッとひとまず安堵した。
『グレスは?』
360゚の空間を見回し、探してみるが見当たらない。
歌声は止まず聞こえてくる。
「これは一体…」
『ねぇ、私達、呼ばれたから来たよ! 真実を教えてくれるんでしょ!?姿を見せてよ!』
リンは大声で叫んだ。
すると目の前に、また夢で見た少女が現れた。
やっぱり夢じゃなかった
貴女だったんだね
" おかえり、最後の女神。待ってたわ "
ふわりと柔らかい笑顔を浮かべ、彼女は側へやって来た。
クラピカは常識では考えられない事象に戸惑い、瞬きすら忘れて彼女を見つめた。
" ここはリンクル・ダークの中…
よく来てくれました。
この子が最後のジュエリストね"
何故か、とても愛おしそうな眼差しをラタルに向ける。
『貴方は誰?リンクル・ダークって?約束って何?私は何で生きられたの?』
一気に沢山の質問を投げ掛ける。
でも本当はまだまだ聞きたい事はある。
" 私の名前はルビー。
この島から遥か離れた国の王女だった"
そう答えると、ルビーと名乗るその少女はゆっくりと話し始めた。
ジュエリストという一族の、真実を。
" 私は貴女の先祖。遠い昔、愛した人との間にできた子供はジュエリストだった "
そう。
彼女が語る真実は、まるでお伽話のような
悲しくて美しいファンタジー。
それは遠い遠い昔。
若くして王位を継承した賢王が治め、平和と繁栄を誇るその国に、ルビーは生まれた。
王が最も溺愛していた末の王女だった。
歌うのが大好きで、そこにいるだけで場が明るくなるような少女。
周りの人間に愛される、優しい心と美しい姿を持っていたルビー。
しかしその好奇心は誰より旺盛で、城での退屈な毎日には心底飽々していた。
初めての事だった。
付き人の目を盗んで外へ出た。
走って走って城のすぐ近くにある森へ入った。
「きゃはははっ」
初めて出る城の外。
初めて全力で走る足はおぼつかず、何度も転んでドレスを汚した。
それでも嬉しくて、地面に分厚い絨毯を作った枯れ葉を空に向かって投げた。
ハラハラと自分に舞い落ちてくる。
そんな下らない事が楽しくて空気の味にも感動して、心が躍った。
何度も何度も空に枯れ葉を投げては降らす。
空の色さえ違って見えた。
大好きな歌を、誰の目も耳も気にせずに、好きなように歌った。
初めて自分が自分の為だけに存在しているのを感じた―――――
そんなルビーの姿を、木の陰から見ていた一人の男。
カサッ─────
「だぁれ?」
ルビーは枯れ葉を踏む足音に反応し、振り向いて声をかけた。
素直に木陰から姿を見せたその男は、両手一杯に持っていた野の花を、頭上からルビーに降らせた。
「…こっちの方が似合う」
栗色の髪、大きくて凛々しい力強い瞳、低く甘い声。
「…貴方は…?」
「俺はラフラス。君の名は?」
───互いに一目で恋に落ちた。
身分の違う相手への許されない想い。
運命の歯車が回り始めた瞬間だった。
・