出発
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航海の間、ネテロは殆んど操縦室から出て来なかった。
クラピカは毎日、主に読書とラタルの相手をして過ごした。
グレスは暇そうに景色を眺めたり、ゲームをしている事が多かった。
毎日の食事は全てリンが作った。
船酔いする者はさすがに誰もいなかった。
長い一週間。
船から見える景色は変わる事なく360゚水平線。
世界一広い海。
小島ひとつ見当たらない。
心配していた嵐には、クラピカの予想通り遭遇する事はなかった。
そうして一週間は過ぎた。
読み通り、ピッタリの期間。
《島が見えてきたぞぃ。外に出てみ》
会長が放送でそう告げたのは、出発してから丁度一週間経った日の早朝だった。
それぞれバラバラの場所にいた三人は、急いで甲板に出た。
毎日毎日どこを見ても海しかなかった景色。
しかし今、目の前には確かに島がある。
小さいが緑に溢れた島が。
『あ、あれ!?あれがそうなの!?』
思わず隣りにいるグレスの腕を叩いて興奮気味に尋ねるリン。
「ああ…あれです…!我々が暮らしていた……」
自然とグレスの目からは涙が零れていた。
『グレス…』
16…いや、17年振りの故郷。
穏やかに暮らしていた日々。
仲間の笑顔。
グレスは今鮮明に思い出していた。
「…もう二度と…来る事はないと思ってました…」
『…うん、よかったね。きっとみんな喜ぶよ』
皆はだんだんと近付いていく島の姿を見ていた。
小さいが、思っていたよりは大きい。
入り口はあるのかと言う程緑が生い茂っている。
とうとうやって来た
私が生まれた島
一族の皆が暮らしていた場所
何もなければ、きっと今でも私とグレスが住んでいた…
リンは気持ちを高ぶらせながら、不思議な思いで島を見つめた。
やがて船は岸に辿り着き、一行は白い浜辺へと足を踏み入れた。
皆はすぐにそこが他の場所とは違うのだと認識した。
空気が澄みきっていて、呼吸が楽だ。
沢山の木々には美しい果物がなり、とてもいい匂いがする。
島の周りの海は透明で、深いのに底まで見える。
魚も沢山いる。
冷たいでもなく温くもない、心地良い風。
島のどこからか、綺麗な歌声が聞こえてくる。
「!!
誰かいるのか?」
クラピカは鎖を現し、凝を行う。
『違う。誰もいない。これは…』
リンはラタルを抱き、先陣を切って島の奥へと進み始めた。
「リンさん、待って下さい!」
「リン、私が先を歩く」
『大丈夫』
私にはわかる
この歌声、夢で聞いたあの声だ
『貴方も待っててくれたんだね』
誰も住まないはずのその島は、足場も綺麗で草道には轍のような道が残っていた。
この子を見せに来たよ
やっと会えるね
今、行くからね
三人が降りた後、ネテロは一人、船の上から真っ青に晴れた空を見上げた。
「アルトよ…お前が宝を見つけたと言った島じゃ。
…ようやくワシも来れたわい」
神の生んだ部族と言われたジュエリストの島。
真実のベールが、今開かれる。
~続く~