君を想う
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『ど、どこに行くの?』
「さぁ…考えてないな。ただ世界中を回ろうと思って。
もともと放浪していたしな」
『また帰ってくるの?』
わ、バカ…何を訊いてるんだ私は!
でも…なんか…
なんかもう……
「リン」
クロロの言葉に胸が波打つ。
なんで、でも…私はクロロを……
「俺はもう多分、お前と会う事はない」
─────!!
……やっぱり……
会わない。そう決めたから出ていくんだ
『…そっか』
私との思い出を置いて、あの部屋を出る
断ち切るんだ
前に進むんだね…
「お前より好きになれる誰かに出会えるよう、祈っててくれ」
ほんの少し笑いを含み、クロロが言う。
リンは、クラピカへの裏切りと思いつつも、込み上げる淋しさに涙が溢れ出す。
『うん…祈っとく…でも私の事も忘れないでね』
「…泣いてるのか?」
クロロの優しい声が、更にリンの涙を誘う。
『好きな人、できても…私を好きだった事、忘れないでね。無理に忘れようとなんてしないでね。
ずっと好きでいてもいいよ』
忘れないで
私も、クロロが罪を背負いながらでも幸せを見付ける事、祈ってる
ずっとずっと、一生忘れないから……
「…好きでいてもいいのか?」
『はは…いいよっ』
それは去りゆくクロロにとって一番嬉しい言葉だった。
他の誰かを愛して幸せになれ、などと言われるよりも、何百倍も救われた。
『クロロ…ありがとう…ありがとう…!』
「俺の台詞だ。お前に会えて、本当によかった」
こんな気持ちを教えてくれた君に、感謝してる────
リンとの最後の会話だった。
クロロは出し入れ自由の念の風呂敷に少ない荷物をしまい、リンと過ごした部屋をそのままにして出て行った。
意図的に振り向く事を拒んだ。
切り捨てるんじゃない。
忘れられるわけがない。
暗い廃ビルの地下を出て、クロロは明るく晴れ渡った空を見上げて立ち止まった。
…忘れられるはずがない。
空を見ても、海を見ても、山を見ても、きっとリンを思いだす。
"私はリン!15歳!"
"大丈夫!私が必ず守るから!!"
"旅、いいね。行こっか"
"ごめん…ごめんね、クロロ…"
"ありがとう……"
"クロロ"
"クロロ……"
"クロロ!!"
…彼女も、この空の下で生き続ける
これからもずっと
出会った日を今でも鮮明に思いだせる
お互いに何も知らなかったあの日
もう一度戻れたらいいのにな
…戻れても同じか
「…青いな…痛いくらい…」
お前を想って涙するのはこれが最後だ
また来世
今度はきっとあいつより先にお前に出会う
また…会おう
クロロは歩き出した。
広い空の下、そよぐ風がクロロの頬を撫でて涙をさらった。
幸せを祈る。
あの娘の笑顔を、胸に抱いて生きていく。
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