ラタル
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リンは、真っ赤な顔でありったけの力を振り絞り、お腹の子供を外へと押し出した。
『ふぅっ!………っっっ………』
「…よしっ!オッケー!!楽にして、胸の上に手を乗せて!」
目を回しながらゼーゼーと息を切らし、とりあえず言われた通りにする。
もう何がなんだか…
痛すぎてもう…
よくわかんない…
「リン」
ふいに名前を呼ばれ、目を開けて隣りにいるクラピカを見る。
彼の視線はリンの足元へ向けられ、その表情は目を見張るような驚きをうつしていた。
そして………
「ほぉら、産まれた~!元気な男の子!!おめでとう~!!」
先生の声が分娩室に響き渡り、リンは足元を見て目を大きく見開いた。
『ああっ……』
思わず漏れた声は、語尾が泣き出しそうに弱々しい。
そこにいたのは
もしかしたら、会えないかも知れなかった
抱けないかも知れなかった……
夢にまで見た愛しい命
何度も何度も痛みが来る度に諦めかけたけど
やっと、会えた……
クラピカと私の、赤ちゃん……!!
『ああ…私の赤ちゃ…』
リンはボロボロと涙を流してその子を迎えるように両手を広げた。
赤ちゃんは臍の尾が繋がったまま、リンの胸の上に抱かされた。
隣で言葉を失っているクラピカと二人、釘付けになって赤ちゃんの顔を見つめる。
まだ産まれたばかりで全身が白っぽく、ふやふやとふやけている。
『…あったかい…』
ほんのさっきまで自分のお腹の中にいた命は、とってもとっても温かかった。
リンは腕の中の我が子の顔を、食い入るように見つめた。
まだ目も腫れて顔も赤みを持っているが、エコーで見たように顔立ちは間違いなくクラピカにそっくりだ。
髪はリン譲りの栗色。
薄く開いた瞳は光の加減で表情を変える。
…茶?…瑚珀…?ううん、金色にも見える…
切なげに泣き続けるその声は、命のエネルギーを感じる力強いもの。
そして、産まれる前から存在を知っていた胸の宝石は────
薔薇のような真紅で、太陽のような輝きを持っていたリンの宝石とは違う。
南の島の海を思わせるような、澄みきった青。
それでいて深い
深く穏やかなサファイア。
それはずっと見ていたくなるような輝き、美しさ。
「…綺麗だな」
『…うん…綺麗…』
リンに暫く抱かれていると、やがて泣き声もおさまった。
まだ見えないであろう瞳をパッチリと開けて、窺うようにキョロキョロとしている。
『パパとママだよ…聞こえる?ラタル…』
リンは涙を滲ませ、愛しい子供を抱き締めた。
「リン…その名前は…」
『うん、私はラタルがいいと思うんだけど…いいかな?』
クルタ族の言葉で幸福を意味する
これ以上にない素敵な名前だ
『ラタル…あなたは私達の可愛いラタルだよ』
その名を呼んでみると、リンの心は幸せと愛しさに満ち溢れた。
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