分たれた宝石
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それにしても一向に陣痛が進まない。
まだ微弱って言ってたけど、一体あとどれ位待てばいいのかな?
『みんな、隣りの部屋が家族のお泊まり室になってるから休んでていいよ』
旅疲れを心配して、まだまだ自身は余裕なリンが気を遣って言った。
「気にすんな、大丈夫だ!」
『でもレオリオ、ちょっとクマできてるよ!忙しいのに無理して来てくれたんじゃない?』
「あら、大丈夫よね?
でももう夜中だし、明日こそ本番だろうから休みましょっか?」
さりげなくメイカが促す。
やはりレオリオ、寝ていないらしい。
『じゃあ明日、私が一番苦しい時に応援してね!』
行き易いように元気に手を振ると、レオリオは「おぅ!」と片手を挙げてメイカと部屋を出て行った。
『グレスもいいよ、何かあったらどうせ呼ばれるし。あ、家族室に何人泊まるか許可』
「リンさん、胸の宝石を見せて下さい」
立ち上がり、見下ろすグレスの瞳は真剣そのもの。
リンは一瞬ハッとしたが、クラピカを一度チラリと見て表情を確認してから、黙って胸を開いた。
『これ…もう大分前からだから…』
軽く言い訳を添え、すっかり変わり果てた胸の黒い石を見せる。
グレスは予想していたのか、その顔は落ち着いたものだった。
「痛みは?」
『今のところ…』
ルビーから黒曜石に変わったその宝石を、グレスは食い入るように見つめ、まるで導かれるようにそこに指を伸ばした。
『…グレス…?』
呼び掛けても反応はなく、ただ呼ばれるようにリンの宝石に触れた。
そっと、小さく。
様子がおかしい
なんか目が…
グレスじゃ…ない…
クラピカもその様子を注意深く見守る。
何かあればすぐに止められる距離で。
しかし今のグレスからは何も嫌なものは感じない。
リンも手を払い退ける事はしなかった。
「…リンクル…ダーク……」
石に触れたまま、確かにそう言った。
そして──────
『………っっ!!んっ………あっ……!!』
「リン!?」
突然、リンが声を上げて苦しみ始めた。
お腹ではなく、いつものように胸の宝石を押さえている。
クラピカはグレスの体を押し退け、リンの胸を擦った。
「………あ……え?リンさん!?俺、一体……?」
グレスが覚醒し、一瞬の間に豹変したリンの状態に驚いている。
『ああっ……ん~~~~~~っっ!!』
身悶えながらどうしようもない痛みに涙を流すリン。
「医者を!」
クラピカがナースコールを押そうとした手を、リンは咄嗟に掴んで止めた。
『待っ……も………いいっ……から………っっ』
「何が!!」
まさか………
もう、最期……なのか……?
リンの覚悟の瞳と諦めの言葉に、クラピカの顔が青ざめる。
張り裂けそうな胸と殴られたようにガンガンと響く頭。
目の前がクラクラと揺れる。
胸を擦る手が止まり、小さく震え出す。
・