広がる漆黒
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そう疑う程にいつもと違った。
何があったのかとリンが玄関まで行き、ドアを開けようとした瞬間、凄い勢いでバタンッとドアが開き、クラピカが入って来た。
クラピカはリンがすぐ目の前に現れた事に少し驚き、目を見開いたが、その目はリンを捉えるなり別の場所へと視線を移した。
『おかえり!遅くまで大変だったねっ!』
「…………」
クラピカは返事もせずにリンの隣をすり抜けて、家の中へと入って行った。
……あれ?
なんかいつもと違う?
嫌な事でもあったのかな?
リンは玄関のドアを閉め鍵をかけると、すぐクラピカの後を追った。
『ねぇ、夕飯は?お腹空いてない?ロールキャベツ作ったんだけど!あ、先にシャワーかな?それとももう寝る?』
かいがいしく世話を焼こうとクラピカのコートに手をかけた瞬間
「触るな!!」
聞いた事もないような声で怒鳴り上げ、クラピカはリンの手をバシッと払った。
リンは何が起きたのか理解できずに茫然。
思いきり叩き落とされる形になった手を、自分の胸元へ抱えた。
えっ、えっ…何で?
本当にどうしちゃったの!?
仕事で何か?
やつ当た…いや、そんな事する人じゃない
…じゃあ私が?
クラピカはリンに背中を向け、深く俯いている。
『クラピカ……』
恐る恐る呼んでみる。
不安で声が震える。
体の横に降ろされたクラピカの両手は、固く拳を握っている。
張り詰めた背中が、覚悟を決めたかのようにゆっくりと振り返った。
その瞳は黒いコンタクトをしているせいか感情を映さず、ただただ深い闇を携えていた。
『…何か…あった?』
一瞬、尋ねる事を躊躇うほど、悲しみとも怒りともとれぬような見た事もないその表情。
ああ…きっと"あの日"
彼は"あの日"も一人きりでこんな顔をしていたんだろう
家族も友達も帰る場所全てを失ったあの日…
壊れてしまった痕を見ながら…独り……
リンは黒い瞳に捉えられ、金縛りのように動く事も声を出す事もできない。
クラピカはグッと眉間に皺を寄せ、唇を噛み締めた。
本当に悲痛な顔で、ほんの少し上げられた手が空で迷っている。
瞬間、リンは殴られるのかと身を竦めた。
「…クロロに会ったのか?」
『────!』
…耳を疑った。
何故、それを!?
いや、一人しかいない
クロロしかいない
でも何故クロロが!!
『な…ん、で…知っ…』
思わず間抜けな質問をしてしまった。
最後まで一縷の望みを残していたクラピカは、リンの言葉であっけなくそれを摘み取られた。
そうか
リンは本当に奴に頼んだのか
私の記憶を奪うよう―――
「…お前は最低だな。一体何度私を裏切れば気が済むのだ?」
クラピカは恐ろしいほど冷たい声で言い放った。
あの男と同じ、漆黒の目でリンを捉えたまま………
~続く~