広がる漆黒
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「私はこの女性と少し話をしてから帰る。クラピカ、お前はこのまま直帰していい」
「…はい。失礼します」
深夜一時。
ボスであるライト・ノストラードが、遠出ついでに縁あるファミリーのパーティーに誘われ、出席する事になった。
クラピカも護衛をしながらずっとついていたが、知り合った女性との野暮用ができて邪魔になったらしい。
パーティー会場の屋敷を出て自車に乗り込み、くたびれた様子で溜め息を吐く。
一拍置いてからエンジンを回し、急いでリンの待つ家へと車を走らせる。
信号待ちでふと携帯を確認すると、登録されていない番号から着信が入っていた。
極めて限られた人間にしか番号を知らせていない為、珍しい事だった。
仕事の事かも知れないし、もしかしたらリンに関する事かも知れない。
クラピカは気になってその番号にかけ直した。
そして電話に出た意外な声の主に、心臓が止まりそうになった。
「クラピカか?…俺がわかるか?」
───瞬間、自分でも驚くほど体が硬直した。
忘れはしない…その憎い程落ち着き払った、脳に響くような低い声。
底無しの闇を孕んだ漆黒の瞳が目の前に浮かび、黒いコンタクトの奥で燃える緋色が広がった。
「…ヒソカに聞いたのか…貴様が今更私に何の用だ」
今でも果てる事なく込みあげる憎しみを、全て込めてクラピカは問うた。
「お前に伝えておきたい事がある」
「なんだ」
「口外しないと約束をしたが…もしも俺がお前なら絶対にごめんだ。お前も同じだろうと思ったから、言ってやる」
内容は見当もつかないが、すぐにリンに関わる事だと悟ったクラピカは、道路脇に車を止めて話を聞く体勢に入る。
「早く本題へ」
クラピカは大きな不安を感じ、話の続きを促した。
「リンが妊娠したせいで命を落とす危険があるそうだな」
「!…それもヒソカに…いや、シャルか?」
「今日リンに会って聞いた。その事に関して頼まれた事がある」
一瞬、クラピカが言葉を詰まらせた。
リンがクロロに!?
何故今更、よりによって…
「…聞いてるか?クラピカ。リンは…」
「リンの用件は何だったのだ!?何故貴様に今更会う必要がある!?」
憤慨して声を荒げるクラピカ。
「落ち着け。あいつは自分が万が一死んだ時にお前がどうなるかを心配していた」
「だから何だ!!」
「もしそうなった時には、お前からリンに関する記憶を消すよう頼まれた」
「………は!?」
…記憶……リンの……?
心が凍りつく。
予想もしなかった言葉に、頭が真っ白になる。
スーッと頭のてっぺんから冷たい風が降りて、にわかに手が震え出すのがわかった。
…何を…こいつは何を言ってるんだ…?
リンが……?
……嘘だ
嘘に決まってる…!!
「嘘じゃない。リンに頼まれた時、一旦は引き受けた。
だがもし俺がお前なら、どんな事があっても忘れるのは嫌だと思った。それは正解じゃないと」
クロロの言葉など、もはや聞こえてはいない。
ガンガンと割れるように痛む頭を、クラピカは拳で抱え込む。
・