痛みの共有
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心臓が痛いほど強く鼓動を奏でる。
触れられた頬が異様に熱い。
リンはゆっくりとクロロに顔を近付ける。
吐息が触れ合う距離。リンもそっと瞳を閉じ、
二人の唇が静かに重なった。
その瞬間、クロロはリンの後頭部に手を回し、力強く口付けた。
感情に任せて抱き締め、貧るように深い深いキスをした。
リンは抵抗しなかった。
応えるように唇が反応する。
激しく熱を帯びて、濡れた音が部屋に響いて
クロロは最後についばむようなキスをすると、ようやくリンを解放した。
二人とも微かに息が荒れ、間近に見たリンの顔は、涙目で頬が赤く染まっていた。
何やら気まずい。
クロロの顔も少し赤くなっている。
リンはクロロから顔を逸らし、俯いて小さく一言放った。
『…最初で…最後だから』
口元を押さえて少し悔しそうにクロロを睨みつける。
「わかってるよ」
『…約束も守ってね。ちゃんと…私に何かあったらクラピカの事…』
「リン」
隣りでリンの手をしっかり握りしめ、クロロは真っ直ぐ見つめた。
「俺は…お前がいなくなってから毎日お前の事が頭から離れなかった。前よりもっと。
…お前の夢ばかり見て、お前の陰を追いながら過ごしていた」
『え…く、クロロ…?』
真剣な表情。
彼の言葉を聞きながら、その眼差しに不安すらおぼえる。
『な、何が言いたいの?』
リンは堪らず口を挟んだ。
クロロが握る手を振りほどけない。
「俺はお前を諦めると決意しながらも、心は自分の意思でどうにかなるものじゃなかった。本当はずっと欲しかった。
だがもう何もいらない。何も望みはしない。お前が生きていてくれるなら」
微かにクロロの手が震えている事に気付き、リンは息を飲んだ。
とてもクロロの言葉とは思えない。
「俺のものになんかならなくていい。一生会えなくてもいい。俺の事など忘れてもいい。
頼むから生きてくれ」
『クロロ……!』
クロロの頬に一筋の雫が流れて落ちた。
リンは、いつかのようにまたクロロの想いを感じて、通じ合うように苦しくなった。
そして同じように涙を流していた。
『クロロ……』
クロロの涙を指で拭い、クロロの手を自分の頬に宛てた。
クロロが私にくれる愛情は本当に深かった
海のようで、空のようで、風のようで…
それじゃあクロロ自身が溺れて…しまうじゃん
「生きてくれ。二度と会えなくていい。同じ空の下にいるだけでいい。
生きていてくれ……」
もう他には何もいらない
子供を産んだ後で
もしもお前が無事だったなら、俺はこの部屋を出よう
お前の幻が残る地下の暗いこの場所から出て、同じ空を見ながら生きる
クロロとリンは、泣きながら抱き合った。
痛みを共有して……
そしてこれが、二人の今生の別れとなった。
~続く~