痛みの共有
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私が死んだら…
クラピカから私の記憶…消して欲しい…
澄んだ瞳でクロロを見つめるリン。
狂気じみたそのセリフは、真っ直ぐなリンによく似合うと、クロロは頭の隅で思った。
「…何故だ?」
あんなに愛してるんだろう?
忘れさせる…
理由がわからない
理解できない事ばかりで混乱するクロロ。
リンは虚ろに遠い目をして言った。
『クラピカがそう言ったから。死ぬのなら自分の記憶からも消えてくれって…』
泣きそうになるのを必死で堪えるように、顔を上げて天井を仰いだ。
クラピカが言った
すっごく辛そうに
俯きながら、言ったんだもん
『だからそうするの。お願い、私が死んだら…クラピカを…元に戻してあげてね。
私と出会う前のクラピカに…』
「それは本当にあの男が望んでいる事か?」
追い詰めるように強い声で問われ、リンは小さく肩を竦めた。
『…そだね…わかってるよ。ホントは嫌だって言うに決まってる。
でも…この先クラピカが一人になってしまうなら忘れた方がいいと思う。楽だと思う。それくらい…愛して貰ったから…』
「ならお前はそれでいいのか?本当に?」
『…いい…わけないよ…でもそれで彼が少しでも苦しみから解放されるなら、私はそうする。
置いてくんだもん。これから生きるのはクラピカの方だもん。私がワガママ言えるわけないよ…』
置いて…
考えるだけで涙が止まらない
死ぬのは怖くない
師匠やみんなのいる場所に行くだけだ
でも────
クラピカと離れるのが、死ぬより怖い
怖くてたまらない──!
リンはクロロの前で大粒の涙をこぼした。
クラピカへの想いとともに、とめどなく溢れる涙を。
クロロは、涙するリンを黙って見守り、テーブルの端に転がったリンの通帳を返した。
『…あ、そういえば…あの時の魔法使いみたいなお婆さんとはまだ縁あるの?』
ぐすぐすとティッシュで鼻をすすりながら尋ねるリン。
「…あの人は死んだ」
『えっ!?それじゃあ…』
「もうすぐ息子が自分を殺しに来るから、自分の持つ能力は全てやると言われてな。
俺は他人の能力を自分のものにする事ができる。有り難くもらったよ」
何の感情もなく、その悲しい物語を話すクロロ。
リン以外の事には実質あまり変わっていない。
ただ、殺しは永久にしないと密かに胸に決めてはいた。
『え?息子に!?…あ、いや、てゆーか…じゃあクロロ自身がアレできるって事?』
「ああ。他人の記憶を奪う事ができる」
リンはホッとしたように笑みを浮かべた。
その時。
『っ!!あっ…っ!』
またもや胸に走る痛み。
ここ最近、頻度が増している。
激痛に顔を歪め、胸を押さえて椅子から倒れ込むリン。
「どうした?胸が痛むのか?」
席を立ち、クロロはすぐにリンの側へ来て抱き起こした。
『ほ…宝石んとこ…』
痛いよ!めちゃくちゃ痛い…!
何なの、これ!?
し…死ぬ…っ!
あまりの痛みに汗と涙が滲む。
クロロがニットの襟を下げて胸の宝石を見てみると、以前見た時とは違う、真っ黒な黒曜石が埋まっていた。
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