波
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それは突然、やって来た。
心の準備も何もないまま、リンは目の前で倒れた。
確かにいつだって全ては突然だ。
あの時も……失う時はいつも……
「リンの様子はどうだ!?」
車で病院へ向かい、運転しているクラピカが信号待ちで後部座席を振り返った。
リンが寝かされ、シートの足元の所でキルアとゴンが傍についている。
「見た感じ寝てるみたいだ。さっきと変わらない」
「顔色も悪くないし」
リンの顔を覗き込むクラピカの方が、血の気が引いて冷や汗をかいて、気分が悪そうだ。
「大丈夫?クラピカ…」
「私は何ともない。リンを頼む」
信号が変わり、またクラピカが車を走らせる。
ハンドルを握る手が震える。
怖い。ただその一言。
「貧血とか…今までなかったのかよ?」
「血液検査では異常はなかった」
「倒れるのって初めて?」
「妊娠初期には気分が悪くなる事はあったが、倒れる事はなかった」
キルアとゴンはそれぞれリンの手を固く握り、眠るその顔を見つめていた。
病院に着くと、連絡を受けていた看護師らがすぐにリンを受け入れた。
掛かり付けの医師が急いでリンを診る。
クラピカとキルアとゴンは冷たい廊下の長椅子に座って待っていた。
診療は比較的短い時間で終わり、すぐにクラピカが呼ばれた。
「とりあえず何の異常も見られませんでした。眠っているだけですね」
リンの寝ているベットの側で、医師がクラピカに説明をする。
「お腹の子供も元気に動いています。でもひとつだけ気になる事が…」
「何ですか?」
「…胸の宝石、以前見た時と明らかに色が違います」
医師はリンのワンピースの胸元を開け、クラピカに宝石を見せた。
「────!」
それは旅行先で見た時よりも更に鈍く色を変え、光を失い冷たい色をしていた。
「リン…」
旅行から帰って来てから一度もなかったのに。
妊娠六ヶ月になった今。
今になって────
「検査をしてもこれ以上は多分…」
「ええ…ですがもう一度お願いします。検査をして下さい」
クラピカは深く頭を下げた。
「わかりました。ひとまず彼女が目を覚ますまで様子を見ましょう」
そう言って、先生は病室を出て行った。
看護師に「どうぞ」と促され、廊下で待っていたキルアとゴンも中へ入って来た。
「クラピカ…わっ、その宝石…!」
「黒くなってんじゃねーかよ!」
二人はリンの胸の石を見るなり、声を張り上げた。
リンの瞼がピクッと微かに揺れる。
・