シークレット
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リンはグレスにあるお願いをした。
それは散々、悩んで迷って苦しんで、ようやく導き出したひとつの結論だった。
決して前向きではない。
できるなら、避けたい未来の話だった。
それでも、彼しかいない。
命を懸けて、リンは大切な物を守り、捨てる覚悟を決めたのだ。
話を聞いたグレスは、体を震わせ、涙を流した。
「…貴方は…それでいいんですか?他にまだ道はあるでしょう!?どうして……まだ間に合うのにっ……」
重ねたリンの手に、グレスの涙がポタポタと落ちる。
『…ごめんね。ホントごめんね…グレスしか頼める人がいないの。グレスが…一番だと思ったの。だから…』
「俺の事など構いません!それより、彼が…クラピカさんが…」
『大丈夫。クラピカなら、きっとそれでも生きてくれる』
いつになく落ち着いたリンの声。
穏やかな微笑み。
グレスはたまらず声を殺して泣き続けた。
皆に気付かれないように、顔を背けて。
…ごめんね、グレス
私は大丈夫だけど、貴方は辛いね
でも、"もしも"があったら、もう道はそれしかないと思うの
私がクラピカにできる事
あの人を守りたい
『…返事は今じゃなくていいよ。また子供の事で何かわかったら連絡するね』
グレスの肩をポンポンと宥めるように叩き、リンは座っていたベットから立ち上がった。
そして何事もなかったかのように、元気に皆の元へ紛れていった。
『お腹空いたな~!あ、唐揚げ!唐揚げもう一皿頼もう!』
「お前さっきまでめちゃくちゃ食ってたじゃねーかよ!」
『妊婦だもん!文句あっか!?』
胸に抱える不安や恐怖など微塵も見せず、皆と笑いあうリン。
そんな姿を見ると、グレスは心が裂かれる程辛かった。
飲むだけ飲んで騒いだあと、皆は各々の部屋へ戻り、寝静まった。
時計は夜中の一時を指していた。
『お腹いっぱい!眠れそうにないな~。クラピカは?』
リンがゴロゴロとベットを転げながら、まだテーブルについているクラピカに話しかけた。
「あれだけ食べればな。本当に太るぞ」
『いや、クラピカに嫌われたくないから太らないもん!』
少し苦い顔をしてリンが笑う。
あ、でも今は妊娠中だしろくな運動できないんだ
へへ…どうしよ
太りたくないからとりあえず……
リンはベットの上で手足をブンブンバタバタ振り回した。
これで少しはカロリー消費できるんじゃない!?
そんな間抜けな様子を見ながら、クラピカはクスクス笑った。
「お前ってヤツは…飽きないな」
『そう!?ありがとう!これからも頑張ります!』
おかしな返事がまたクラピカの笑いを誘う。
クラピカはグラスに残ったワインの最後の一口を飲み干し、席をたってリンの元へやって来た。
『クラピカ!』
手足の運動を止め、体を起こしてクラピカに抱きつくリン。
『好き好き好き!!んもうクラピカが大好きだよっ!!』
「ああ。私もリンが好きだ」
『やった!嬉しい~!』
「…今更…」
『何度言われても嬉しいよ!!』
クラピカに強く抱き締められ、そのままベットに雪崩れ込む。
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