結婚式ー後編ー
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賑やかに騒ぎ続ける皆を背に、クラピカは止まる事なく走り続けた。
『クラピカ!!もうっ!頑固すぎっ!!』
追い付くのは困難とわかっていても、リンは回転を上げた早歩きでクラピカを追いかける。
名前を呼んでも、振り返らない背中。
いつしか皆の声も聞こえない程離れてしまい、足場は芝生から花畑へと変わっていた。
『ぐわっ、歩きにくい!』
美しく咲き競う花々を踏み散らすのを嫌い、リンは早足からゆっくりペースを落とした。
『クラピカ…クラピカぁ!』
クラピカは振り返らないまま、黙って立ち止まった。
輝く真っ青な空を見上げる。
「暑いな…」
既に太陽は高く登り、午前とはいえ、真夏の気温は肌をじんわり湿らせる。
クラピカは白いタキシードを脱ぎ、ワイシャツの袖を捲った。
そしてゆっくりと、リンの方を振り返った。
色とりどりの花畑の中で、真っ白なドレスを身に纏ったリンが息を切らせて立っている。
リンはクラピカと視線を合わせると、持ったままでいたブーケを下に置いて両手を広げた。
『クラピカ!ぎゅーっ!』
真顔で抱擁をねだるリン。
そんな姿も、今のクラピカには愛しくて、自然と自分の手も開かれた。
「こっちへ…」
数メートル先からクラピカが呼ぶと、リンは丁寧に一歩一歩花畑を歩き出した。
『クラピカ…』
辿り着くまでにだいぶかかり、伸ばした互いの指先が触れるなり、クラピカは一歩踏み出してリンの体を抱き締めた。
『きゃははっ!!』
嬉しそうな声が林に響き渡る。
クラピカはそのまま、花畑にリンの体をそっと沈めた。
咲き乱れた花々の中に、柔らかく寝かされたリン。
思わず瞑った瞳を開いた時には、目の前に重なるようにクラピカがいた。
『…グラス…』
「まだ持ってる」
クラピカの右手にはまだワインが少量入ったグラスがあった。
それを側に置いて、空いた手をリンの頬に添えた。
「リン…」
見つめる瞳が本当に愛しおしそうで、リンは胸を締め付けられる。
『クラピカ、だーい好き。大好きだよ』
「知っている」
『くふふ…クラピカは?』
「知っているくせに訊くな」
『知らない~教えてよ!』
「…嘘つきだな」
クラピカはリンの額にキスを落とした。
いつの間にか二人の両手は重ねられ、嬉しそうに笑うリンの瞳から溢れた涙が、花畑に滴り落ちた。
──まるで夢みたいだね
目が覚めたら、何もかも嘘だったりして
もしそうなら、どこからが夢?
私はクラピカと出会ってからもうずっと幸せで、ずっと夢みたいな日々を過ごして来た
クラピカと出会えた事自体、夢なのかも
目の前のクラピカを確かめるように、感じるように、力を込めて抱き締める。
『ずっとこうしていたいね…』
永遠があるのなら、今この時が永遠になればいいのに
幸せすぎて泣けてくるなんて
ばかみたいに呑気だね
でも触れ合うだけですっごく切ないんだもん…
「リン~!クラピカ~!」
遠くから二人を呼ぶゴンの声が聞こえた。
『「!!』」
クラピカは慌てて起き上がり、リンの上から離れた。
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