結婚式ー後編ー
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「それにしても本当にいい所だな」
センリツの酌を受けながら、クラピカは目を細めて遠くの景色を眺めた。
「そうね。ここで挙げる事、誰が決めたの?」
「私だが、仕事の合間に店に行って資料から選んだだけだったから…来たのは一昨日が初めてだったんだ」
ここにして本当によかった
…昔暮らしたクルタ族の故郷に何処か似ている
芝生になった足場も、ここから見える景色も違うのに、何故かそう思う
こうしていつもの仲間たちといると、尚更錯覚する
空気が…風の匂いが似ている
不思議に懐かしい
「クラピカは飲まないのかよ?」
少し階段を登った場所にある展望台で景色を眺めていたクラピカに、キルアがワイン片手に声をかけて来た。
「また飲んでいるのか、キルア。成長期の身体に悪いぞ」
「大丈夫。親父も兄貴も背高いし。つーか主役がこんなとこで何してんだよ」
「ここの風が気持ち良くてな。下は随分と賑やかだが…」
「ああ。レオリオとリンの仲間の人が飲み対決してんだよ」
「またか」
クラピカが下を覗くと、レオリオは既にバカ高いテンションになっており、隣りでメイカが手拍子しながら煽っている。
グレスは顔色ひとつ変えず、ニコニコと一気にグラスを空けた。
傍らで婚約者の女性が心配そうに声をかけるのを、頷きながらなだめている。
「リンが酒に強いのは一族の血統のようだな」
「マジすっげぇよな!あの体の石に秘密があるのかも」
「…………」
キルアの何気ない言葉に、クラピカは微かに眉を寄せた。
体の石……か
もしキルアが " あの事 " を知ったらどうするだろう?
キルアもリンを好いているのだ
知っていた方がいい
もしもキルアなら…?
話して…みようか…
クラピカの考え込む顔を見て、キルアが先に口を開いた。
「何?俺に何か話したい事でもあった?」
「…ああ」
クラピカは尚、迷った。
話してもキルアを悩ませるだけではないか?
自分の抱えているものを分けあいたいだけではないのか?
まだ齢13のこの少年には荷が重すぎる相談かも知れない
…だがキルアは普通の13歳とは違う
頭もいい
話もわかる
───だいたい、もしも何かあった時に、何も知らないままだったのではあまりに辛いだろう
クラピカは意を決して話を切り出した。
「キルア……実は……」
クラピカはキルアに全てを話した。
リンの身に迫っている運命を。
子供を産めば命を落とすかも知れない事を。
キルアは予想もしていなかった事態になっている事を知らされ、余りのショックで言葉を失った。
「お前ならどうする?キルア…
私にはどれだけ考えても答えが出ない。守るべきは何なのか…私がすべき事は何なのか…」
リンの心
私の心
子供の命
リンの命…
全てを守るには一体どうすればいい?
「俺は…俺がクラピカなら、リンの命を最優先に考える。一生子供ができなくても、リンがいなくなる方が怖い」
キルアは展望台の手摺に腰掛け、背に風を受けながら言った。
「…そうだな。私も同じ気持ちだった。
だがリンは絶対に子供は諦めないと言った。たとえ自分が死ぬ事になっても」
「あいつならそう言うだろうな…」
キルアは俯き、瞳を伏せて溜め息を吐いた。
その時───
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