願いと祈り
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クラピカの腕が、リンの背中に回される事はなかった。
死ぬな
置いていくな
もう二度とあんな想いをしたくない
失うのは
もう絶対に嫌だ!!
リンはクラピカの冷えた頬に手を添えて、背伸びをしながら唇を重ねた。
『…大好きだから、絶対置いてかない。死ぬのは怖くない。クラピカと離れるのが死ぬより怖い』
だから、死なない
私はこの子を産んで立派に育てるんだ
クラピカと二人で
伝説が何だってゆーの!
そんなもの、私が覆してみせる!!
『任せてクラピカ…信じていて!』
リンの言葉に、返事をする代わりに回された腕。
その強い力に、不意に涙が溢れそうになった。
グレス、心配かけてごめん
でも私は大丈夫
クラピカの同胞、ジュエリストの仲間、師匠
皆が私を守ってくれてると信じてるから
『…ところでお腹空かない?何か食べに行こうよ』
グ~ッとお腹を鳴らしながら、リンが恥ずかしそうに言った。
「…さっきグレスさんと会うまで食べ通しだったではないか」
やっと聞けた声は、意外にも普通のトーンで返ってきて、ホッとした。
『だって赤ちゃんが欲しいって』
「太っても知らないからな」
『太ったら嫌い?』
「できれば今の体型を維持して欲しいとは思う」
『ぐっ……頑張りまーす』
リンのつわりは食べづわり。
近頃毎日この調子だ。
「…そうですか。リンさん、やっぱり産む決意は変わらなかったんですね…」
「ああ。貴方には感謝している。話してくれた事を」
あの後、予定通りに観光名所を回って、遊び疲れたリンが眠ってしまった後、クラピカは聞いておいたグレスの連絡先に電話をかけた。
「何もできないくせに心配かけるような話をしてしまっただけでしたね。すみません」
「そんな事はない。知らずにもしもの事があったなら、私は覚悟も何もないままリンを失うところだった。
こうして貴方に再会して話を聞けたのも、偶然ではないと思っている」
「クラピカさん…」
「私は絶対にリンを死なせはしない。何かあった時は…何よりリンを最優先に考える」
決意を込めた、リンにも負けないほど揺るぎない声で、クラピカが言った。
リンが何と言おうと、リンを一番に考える
私はもうリンのいない世界では生きられない
生きる意味がない
「…はい。お願いします。俺も…あの人を失うのは怖いですから」
皆そう思っている
私も彼も、ゴンもキルアもレオリオもセンリツも……
皆がお前を必要としているんだ
───私も子供の事が大切だ
リンとの子供なら、その存在だけで愛おしい
早く顔が見たい
三人で暮らせたら、子供の未来に夢を描きながら、それだけできっと毎日が幸せだ
だから絶対!
…絶対男でいてくれ
男で産まれてきてくれ…!
リンの寝顔を間近で見つめながら、クラピカはただ、そう強く強く祈った。
~続く~