願いと祈り
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
クラピカなら絶対、前向きに考えてくれると思ってた
"きっと大丈夫だ"って
"何があっても二人で乗り越えよう"って
"何とかしてみせるから"って
そう言ってくれると信じてた
……なのに……
まるで頭の上に爆弾が降ってきたみたいだよ
絶望的だよ
……そっか
クラピカはその絶望を、本当に見たんだ
私の知らないその世界は、強くて優しい、誰より清廉なこの人の口から
こんなセリフを言わせるほど
深く、暗く、ほんの少しの光の筋さえ射さない、壮絶な世界だったんだね――――
クラピカの苦しみを想いながら、リンはお腹に手をあて、静かに瞳を閉じた。
「勿論、解決法を探す。二人が助かる方法を絶対見つけるつもりだ。
だがもし見つからなければ…寧ろこの話が真実だという可能性が高くなれば、その時は」
『それでも産むよ。私の気持ちは変わらない』
クラピカの言葉を遮り、リンは強い声で断言した。
恐れを知らない眼差しで、真っ直ぐに前を向いて。
「お前が死ねば、腹の子は生涯、その業を背負う事になるんだぞ」
『そうだね、今のうちに謝っておかなきゃね』
「…真剣に考えろ!私はどうなる?お前がいなくなった後、何の為に生きれば!」
『この子の為に生きて』
「お前なしにか!勝手を言うな!」
『ごめんね。でも諦めるなんてできないよ。私、もうお母さんだもん』
リンは首を横に振り、頑なに拒否した。
『クラピカが一番辛いって事わかってるよ。子供を諦めろなんて言葉、死ぬほど言いたくないよね…ごめんなさい。
でもわかって欲しい。私はこの子を産む。絶対だよ』
「…………」
この決意は動かせない。
クラピカにそう悟らせるに充分なほど、リンの瞳は凛として揺るぎなかった。
今目の前にいるこの娘は一体誰だ?
初めて会った時の、うずくまって泣いていた女の子とはまるで別人だ
いつから…いつから、そんなに強くなった?
私の気付かぬうちに…
「…お前を失えば、生きてなど…いけるものか…」
やっと口から出た言葉がこれか
私はどれだけ情けない……
お前に比べて、私は……
『大丈夫だよ、クラピカ。私、約束するよ!
たとえ女神を産んでも、私は私で絶対生きる!』
青ざめて俯いたクラピカの手を取って、リンはなるべく明るい声で言った。
クラピカは、不安と自己嫌悪に苛まれ、顔を上げる事すらできない。
『大丈夫だよ。置いてったりしないから!』
クラピカ…そんな顔しないで
ごめん…ごめんね
クラピカ
泣いてるの……?
「…お前を失うのが怖いんだ」
消え入りそうな声を絞り出すようにして、クラピカが囁いた。
「もしも死ぬのなら…お前も私を置いて行くのなら…私の記憶からも消えてくれ…」
『クラピカ…』
ゆっくり上げられたその顔は、見るのも辛いくらいに、酷く傷付いていた。
「いなくなるなら、いっそ私からお前の記憶も奪ってくれ」
『…やだよ…そんな事言うのやめてよ…』
「そんな思いをする事になれば…きっと私は出会った事すら後悔してしまう」
出会わなければよかった
こんな思いをする位なら、知らなければよかったと
…そんな風に苦しむ位なら…
「わかるか?リン。お前なしでは生きてなど…いけないんだ」
―――私はまたクラピカに辛い想いをさせるの?やっぱり側にいるべきではなかったの?
今までどれだけこんな自問自答を繰り返して来ただろう?
一体これから何度こんな問い掛けをするだろう?
『クラピカ……』
リンはクラピカの胸に顔を埋め、力一杯抱き締めた。
・