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「なんだよ~!もう今こっから連れ去っちゃおうかな」
『シャルがこの子のパパになるつもり?』
リンが茶化すように言うと、シャルは力なく乾いた笑いを零した。
「クラピカ…鎖野郎の子供か…
本当に有り得ないや」
クロロが戻るならと、ウボォーやパクノダの仇を打つのは諦めた。
だけど、淋しい。二人はもう戻ってこない。
どうやったって、クラピカとシャルは互いに敵同士なのだ。
「…それに、クラピカの傍にいないリンは、まるで別人だって団長が言ってた」
『…クロロが?』
その名前に、リンの顔から笑みが消える。
「少しの間一緒に住んでたけど、記憶を失くしたリンは全然笑わないし性格も違ったって。
傍にいられたけど虚しかったって言ってた」
『クロロが…』
クロロと過ごした数日間を思いだそうとしても、ぼんやりとしてまるで滲んだように曖昧だ。
自分がどんな気持ちで、どんな風にクロロに接していたか思い出せない。
本当はクロロのせいであんな事になって、凄く許せなかったけど…
今私がとっても幸せだから、クロロの痛みに対しては申し訳なく思う
「だから無理矢理浚ったりしても虚しいだけだぞって、釘刺されちゃったよ」
『…クロロ、元気?』
「ある意味元気。どこで騙して来るんだか、女をとっかえひっかえしてるみたい。
ま、リンと出会う前に戻っただけだよ」
『…そっか』
とっかえひっかえ……
………って最低!!
何だそれっ!!
「あーあ、俺も…好きになんかならなきゃよかった!ホント悔しいな!」
『ホントだよ。こっちが迷惑したよ。今度誰か好きになったらもうこんな風に困らせたりしちゃダメだよっ!』
リンはシャルの頭を小さく小突いた。
それから少しの沈黙の後、シャルは溜め息を漏らしながら立ち上がった。
「じゃ、もう用ないし帰る」
そう言ってリンの隣りを通り過ぎようとしたその時
『シャル』
思いがけずリンに声をかけられ、振り向かずに足を止めた。
『…クロロに伝えて。好きになってくれて、ありがとうって』
───ホントは迷惑ばっかだったけど、あのヨークシンの空港で最初に好きだって言われた時、不覚にもちょっとときめいちゃったんだよ
私の目をまっすぐ見つめて、曇りのない声で言ってくれたよね
いつも痛いくらい感じてたその想い、忘れないよ
あなたは確かにクラピカの家族を殺した最悪の敵。その罪はきっと一生かけても償いきれない
でもその想いだけは、私を愛してくれた気持ちだけは、大切に貰っとくからね…
『シャルもありがとう。愛のある人生を生きて下さい』
リンも振り向かず、空いた向かいの席を見つめたまま伝えた。
「愛とか痒い事言うなよ。
…リンが手に入らないなら…二度といらない」
冷たい口調で言い捨て、シャルは早足で玄関から出て行った。
シャル……
ホントにホントに気も合わなかったし困らされたけど
多分、あんたにも本当に愛してくれる人が現れるよ
願わくば、もう二度とその手を血に染めたりしないよう……
誰かの為に、救いの手になって欲しい
リンの頬には一筋の涙が伝っていた。
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