操り姫
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「あーもう!!わかったよ!大人しく出て行くから!それで満足なんだろ?」
いつも勝ち気なリンの涙に、シャルがとうとう折れた。
『ほっ…ホントに!?』
いくらなんでもそこまで言ってくれるとは予想外で、リンは思わず涙の乾いた顔を上げた。
『出てってくれるの!?マジで!?ホントに!?シャル!!』
「…すごい不完全燃焼だけど、これから毎日リンに出ていけ出ていけ言われながらここにいる意味もよくわかんないし」
シャルはリンの明るい声に、不服そうな顔で答えた。
『そうだよ!!その通りだよ!!なんて意義のある決断!!シャル、賢い!!!』
リンは操作された時には出せなかった、シャルの望み通りの虎の子笑顔でシャルの手を強く掴んだ。
『ありがとう!!あんたが私にした今までの事は許すから、どうぞ幸せになってね!!』
シャルと無理矢理握手をし、その手を上下に激しく振った。
勝手に幸せになってね!!
そして二度と私の前に現れないでね!!
笑顔の裏にひた隠したその本音は、都合を考えて慎んだ。
「ちょっと待てよ!誰が諦めるとまで言った!?ノストラードの仕事は辞めるけどリンにはこれからもちょくちょく会いに来るよ!」
『え?やだよ、もうやめて!何度会いに来たって私はシャルを好きになんかなんないから!』
「だからハッキリ言い切るなって!まだわかんないだろ?この先どうなるかなんて」
『いいえ!人間が太陽に住むより有り得ない!』
シャルは必ず再会する事を一方的に約束し、「とりあえず今日は引く」と言って姿を消した。
その場に残されたリンとクラピカ。
クラピカは暗い表情で、シャルの立っていた場所をただ見つめている。
『クラピカ…なんか…また余計な事してごめん…』
「まったくだ」
リンがクラピカを守ろうと体を押したお陰で、余計な展開を招いてしまった。
それを一応気にして謝ったのだが、クラピカからはハッキリと肯定されてしまった。
しかし、その後何か文句を言うわけでもなく、本当にただ静かに悲しげに佇んでいた。
『クラピカ…どうしたの?』
リンの問掛けに、クラピカは視線を落としたまま口を開いた。
「…私は断腸の思いで奴らへの復讐を諦めた。
それなのに、何故かいつまで経っても奴らとの関わりは断ち切れない。これも全て、今は亡き同胞たちの意思の表れかも知れない。
───報復を成し遂げろ、と……」
俯いた顔が、今にも泣きそうに儚く見えた。
『クラピカ!』
リンはクラピカをギュッと強く抱き締めた。
『ごめん…ごめんね!全部私のせいだよね!!復讐を諦めたのも、旅団との縁が切れないのも…
本当にごめんなさい!!』
リンは自分の存在がある事でクラピカの全てを左右してしまう事に気付き、酷くショックを受けた。
「違う!そういう事ではない…お前のせいじゃないんだ。ただ……」
旅団を諦めるというのは、やはり間違っているのか?
葛藤する、自分の中の正義と現実。
クラピカの脳裏をかすめるのは、同胞たちの笑顔と亡骸。
今もまだ報われずに苦しみ続けているかも知れない、彼らの姿だった。
~続く~