疑惑と失敗
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青ざめて俯くリンを見て、横からシャルが口を挟んだ。
「クラピカ怖いって。そんな風に追い込んだらリンだって返事もできないよ」
「黙れ。お前には用はない」
「まぁまぁ落ち着いてさ。リン、大丈夫?」
シャルが言葉をかけるが、リンはうんともすんともない。
「シャル、説明しろ。リンが何の理由もなしでそんな事をするわけがない」
クラピカはシャルの顔を見もしないで問い掛けた。
「別に。リンが盗賊の仕事を嫌いだからって、団長が旅団を辞めるって言いだしたから、俺がリンに頼んだんだ。団長を連れ戻してってね。
"鎖野郎"を団員に諦めさせるって条件つきで」
「────!」
真相を聞いたクラピカの顔から、血の気が引いていく。
リンの無茶の裏には、こうもいつだって自分の存在が置かれているのかと、改めて怖くなる。
…何故お前は…
私の為にばかりそうやって……
「…リン」
ゆるゆると指しのべられた手を、リンはとっさに振り払った。
顔を上げたリンの表情は、今にも泣き出しそうな程に悲しいものだった。
『クラピカのバカ!!』
リンは腹の底から叫んだ。
『私はクラピカを裏切ったりしない!!私はクラピカの為にしか動かない!!
確かにクロロの事、心底恨むことはできなかったけど、今更蜘蛛の誰とも関わるつもりなんてなかった…!』
クラピカから顔を逸らして、リンは泣きながら叫んだ。
「わかっている。だが何故私に黙って奴に会ったりするのだ?」
『クラピカに言ったら反対されるってシャルに言われたし、私もクラピカに心配かけたくなかったんだもん!!』
「私はお前を信用しているが、そういう意味でお前を信じる事ができない。
お前はいつも私の為を思いながら私に黙って無茶をする。
だが私の為ならクロロになど二度と会うな!奴らに関わらずに自分を守る事だけ考えろ」
『わかってる!!クラピカの為にもやられたりしないもん!!
だからこうして無傷で帰って来たじゃん!!』
「たまたまだろう!次もそうだと思うな!」
『私の事疑ったくせに!!』
リンが放ったこの言葉に、クラピカは一瞬言葉を詰まらせた。
そして静かに瞳の緋色を収めると、ゆっくりと口を開いた。
「…疑ってなどいない。
お前は私に誠実でいてくれているし正直だが、ドジなのは否めない。状況判断も得意な方じゃない。
優しさ故に情にほだされ、シャルに丸め込まれてもおかしくない。もし疑ったというのなら、その辺りを想像した事だろうか」
『ひ、酷い…』
「あのな…私だって解っている。お前が例え蜘蛛に関わったとしても、それは私を裏切る為ではない事くらい。
だが、はっきり言って予想以上だ。正直、自分の認識は甘かったのだとわかった」
クラピカは少し荒っぽくリンの涙を拭うと、そのまま両手で冷たい頬を包み込んだ。
「いい加減わかって欲しい。お前に無茶をされる度に、私は心臓が止まりそうになる」
『でっ…でも、私は!』
「それに、どんな理由があろうと二度と私に黙ってクロロに会ったりするな!私の気持ちを無視した…それは紛れもなく裏切りだ」
馬鹿みたいな嫉妬でしかないかも知れない
だが、それが取り繕う事のできない私の本音なのだ
「いいな?私を守ろうと思うより、二度と私に隠れて勝手な事をするな。約束してくれ」
『クラピカ……
うん……わかったよ……』
まだ完全に納得はできないながらも、クラピカの強い瞳を前に、リンは頷くしかなかった。
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