デジャヴの取引き
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それからは大人しく安全運転に努めるシャル。
リンも心を落ち着かせ、改めてシャルに尋ねた。
『ねぇシャル。今からどこに行くの?クロロに会ってないって言ってたけど、居場所わかるの?』
「わかるよ。凄くいい所に住んでるんだ。外から見たらアレだけど」
『(何それ…)私、何て言えばいいの?色々考えたんだけど、前みたく私が蜘蛛に入るなら戻るとか言われたら打つ手ないよ?』
「大丈夫。ちゃんと考えてるから。通用するかは試してみなきゃわかんないけど」
『とにかく、なるべく安全で効率のいい方法でお願いします』
「まぁそうしたいとは思ってます」
季節は初夏。だいぶ日も長くなったが、既に辺りは薄暗くなってきていた。
広い公道で信号待ちをしている間に、今度はシャルがリンに質問する。
「団長とはどうやって知り合ったの?ヒソカもそれだけは知らなくてさ」
『ヨークシンであんたたち競売の会場を襲ったでしょ?あの日だよ。最初はクロロが旅団のリーダーだなんて知らなかった』
「ふーん。で、どうやって団長の心を射止めたわけ?」
『そんな事知らないよ!こっちだって心当たりが全くないんだから!』
あ…もしかして体見せたからかな?
なんて事は言わないけど……
「今までの団長の好みとは全然違うや。何で君なんだろ?ホント納得できないな~」
『凄い失礼だな…でも同感。私みたいな美人でもなくて優しくもない、何もないただの子供…』
…クラピカはどうして好きになってくれたんだろう?
クロロよりもそっちが気になるよ
二人を乗せた車は、ノストラードの屋敷を過ぎ、山を越え、リンも見覚えのある景色へとやってきた。
広く荒れ果てた草原の真ん中に見えるあの建物……
あれは……
「着いた。あれだよ、団長が今住んでる家。すごいボロでしょ?」
シャルが笑って指差したそれは────
『あは……まだここにいたんだ………』
古くて人気のない、さびれた建物……
それは、リンがクラピカの記憶を奪われた後に、 数日間クロロと暮らしたあの廃ビルだった。
リンは、胸に込みあげてくる言葉にできない思いを抑えきれず、涙が溢れて頬を伝った。
いつも流れ流れていたはずのあなたが、何故ここにいつまでも留まるのか……
その気持ちを考えると、本当に胸が痛い。
気を抜くとその場にしゃがみ込んでしまいそうで、リンは拳を強く握りしめた。
クロロに申し訳ない
でも………
重いよ
とても抱えきれない
受け止められない
こんな風にしか思えない自分も嫌だ
本当にごめん……!!
「何、どうかしたの?早く降りて」
シャルが後部座席のドアを開けてリンを促した。
リンは無言で車を降り、クロロがいるであろうビルを下から見上げた。
──正直、会いたくないのが本音だ
でもこれが最後だ
あんたたち蜘蛛と関わるのも!!
リンは静かに瞳を閉じた。
目の前にはクラピカの優しい笑顔がハッキリと見える。
…オーケー、大丈夫
クラピカの為なら何でもできる……!
心を決め、開かれたリンの瞳には、迷いなど微塵もなかった。
そしてシャルよりも先に廃ビルの中へと進んでいった。
クラピカ……待っててね
これを最後にしてみせる!!
~続く~