永遠の誓い
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取り出された婚姻届けの変わり果てた姿に、クラピカは内心かなり呆れていた。
昨日渡したばかりなのに…
八つ折りに細かく畳まれて、それを広げてみれば既にもう皺くちゃだ。
(…字が下手なのは今更突っ込むまいが…)
「鞄に入れているかと思えば…もうそんなザマか」
『へ?ダメ?肌身離さず持っていたくて!』
「成程…」と納得すると思うのか。
リンは清々しい程、大雑把だ。
「…さてはO型だろう?」
『Aです!』
…血液型の性格診断なんて、やはり宛てにはならんな
なんて事を思いながら、クラピカは一人で軽く笑った。
役所へ向かう車内でもリンの鼻唄は止まらない。
しかしずっと同じ歌。
歌詞もない。
「何の曲だ?」
『師匠の作った曲なんだ。ああ見えてギター弾けるんだよ。作曲とかしてた。結局完成できたのはこの曲だけだけど』
懐かしく思いだし、遠い空を見上げる。
『師匠……今日私、大好きな人のお嫁さんになるんだ…』
無意識に声に出していた。
師匠の豪快な笑顔を、青く澄んだ空に映す。
顔も知らないけど、産んでくれたお母さんとお父さん…
私が生まれた時に盛大にお祝いしてくれた皆…
グレス…元気かな?
キルア…ゴン…レオリオ…
心から皆に感謝します
本当にありがとう
…今はクロロにさえ、そう思う
クラピカが傍にいてくれれば、私はもう誰も憎まずに生きていける──
役所に着いて車を降り、二人は手を取り合って中へと入った。
週の始めという事もあり、予想以上に人が多く、じれったい程長い長い順番待ちの末、ようやく番号を呼ばれて必要な書類を提出した。
暫く確認の為の時間が空き、そして……
「婚姻届を受理致しました。おめでとうございます」
受け付けの女性からの、祝福の言葉。
二人は顔を見合わせて微笑み、繋いでいだ手を更に強く握り合った。
出会ってから一年半──
この日、二人は夫婦になった。
喜びを噛み締めながら、寄り添いあって役所を出る。
車の中でもずっと手を繋いだまま、会話もなく静かだった。
それが今は一番居心地が良くて自然で──
寧ろ会話などいらない。
何もかもが繋いだ手から伝わってくる。
外は痛い位の晴天で、雲ひとつない真っ青な空が眩しい。
流れていく景色を見送りながら、リンはいつの間にか眠りについていた。
すると、不思議な夢を見た。
その夢の中でリンは、珍しい民族衣装を着た女性達に囲まれて、綺麗に化粧をされ、美しい花嫁衣装を着せられると、手を引かれてどこかへ連れられた。
そして目の前にあった真っ白な長い階段を登りきると、そこには色とりどりの沢山の花々が鮮やかに咲き乱れ、奥に神殿のような立派な純白の建物が見えた。
建物の前には大勢の人達が待っていて、皆がこちらを見つめながら笑顔で拍手をしているのだ。
何も言わずに、ただ暖かい日溜まりの中で微笑みながら……
リンもそこへ行こうとして歩みを進めるのだが、中々うまく進まない。
何かに流されるように進んでは戻り、進んでは戻り……
そうこうしているうちに、皆とどんどん遠ざかっていく。
必死に手を伸ばして叫ぶのだが、皆はただそれを笑顔で見つめていた。
見た事もない景色
知らない人達……
だけど何故かそれらは不思議に懐かしくて、温かくて………
目覚めたリンの頬には、一筋の涙が流れていた。
「───…起きたか。着いたぞ」
助手席のリンに呼び掛け、クラピカは車から降りた。
『ん……?ここは……』
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