決意
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「ここを退院した日に、籍を入れに行きたいんだ」
『ええっっ!!』
突然の事に、リンは怪我人なのに飛んで驚いた。
『せ、せ、籍!?結婚するって事!!?』
「そんなに驚かなくとも、プロポーズはとっくにしていただろう」
クラピカはいつも通り、至って冷静。
『なに、お願いって…一生のワガママってそれ!?』
「ああ。今すぐにお前を貰う事だ。充分、我が儘だろう?」
リンは呆けた顔で固まっている。
クラピカと籍…
今すぐお嫁さん…!
『断るわけないじゃん!何なら勝手に入れといてもよかったくらいだし!』
「ははっ…よかった。予想通りの反応だな」
クラピカがクスッと笑みを零す。
『なによ~!じゃあ、一生に一度のお願いなんてかしこまらなくてもいいじゃん!!私すっごく心配したんだから!!』
「大事な事だろう。結婚するという事は、一生私の傍にいるという事だ。
まだ16のお前が残りの人生をずっと私のものとして生きるんだぞ。ちゃんとそこまで考えて返事しているのか?」
もちろん、とリンは強く頷く。
「他にいい奴が現れても、後で後悔しても、私は絶対お前を放さない。覚悟はいいな?」
『愚問だよ!』
満面の笑顔に喜びの涙を降らせ、リンはクラピカの胸に飛び込んだ。
「おっ…おい、傷は大丈夫か!?」
『もうどこも痛くないよ!!』
幸せすぎてホント、それが一番怖いくらい…
クラピカの腕の中で目を閉じると
ああ…本当に本当にこの人を愛してるなぁって思う
念で操作されたとはいえ、クラピカの事を少しでも忘れていたなんて信じられない
『…こんなに好きなのに、忘れていたあの6日間…まるで嘘か夢だったみたい…』
リンはクラピカの温もりに甘えながら呟いた。
「そうか…私は今こうしている事の方が夢みたいだ」
返された声色が少し揺れた気がして、リンはクラピカを見上げた。
穏やかに穏やかに微笑みながら、クラピカのその大きな瞳からは、一筋の涙が頬を伝っていた。
『クラピカ…?』
その雫を指で掬うと、自然と自分の目からも涙が溢れ出した。
「リン…同胞たちは…許してくれるだろうか…?
…自分勝手な決断で報復を絶つ事を…こんな私を…恨んではいないだろうか…?」
宝石のように綺麗な涙の粒を幾つも幾つも落として、クラピカは泣いた。
記憶の中の温かい家族…
同胞たちの笑顔…
自分の名を呼ぶ、懐かしい声…
里の風景……
たった独りで生き残ってしまった私が、全てを終える
託されたものを捨てる
きっと恨むだろう
それでも…
全てを投げうってでも守りたいものが、私にはできたんだ
許して欲しい───
『クラピカ…みんな恨んでなんかないよ。殺されてしまった事はきっともの凄く悔しいけど、今は何よりクラピカの幸せを一番願っていると思う。
だから……楽になってもいいじゃない……』
クラピカの涙を唇で拭い、両手で頬を包み込む。
「……本当に…そう思うか…?」
『うん…私ならきっとそう思うよ…』
二人は互いに抱き合いながら泣いた。
互いを慰め、癒すように。
いつの間にか茜の空は色を変え、二人を見守るように、幾千もの星たちが瞬いていた。
~続く~