11日間の地獄
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日も暮れ、キルアとゴンが「明日も来る」と約束して帰って行った。
病室にはクラピカとリンの二人だけになり、静かな時間が流れる。
開けた窓から涼やかな風が入って来て、クラピカの金色の細い髪と、リンの栗色の長い髪をサラサラと揺らした。
「…寒くないか?」
『ううん。気持ちいい』
移された部屋は病棟の一番端で、西日が部屋を綺麗にオレンジ色に染めた。
風の音だけが耳をかすめる心地良い静けさの中、クラピカは持って来ていた本を広げるでもなく、何か話をするわけでもなく、ただ黙ってテーブルに肘をついてリンの顔を眺めている。
『な…何?なんかついてる?』
見つめるクラピカの瞳があまりに綺麗で、リンは少し照れながら頬を手で隠した。
「いや。ただ…お前がいて幸せだと思っていた」
『は??』
予想を弾く突拍子のない事をサラリと言われ、リンの血圧が一気に上昇する。
『やだなー、私が倒れたの、そんなに心配だった?』
照れを誤魔化そうとからかうように笑ってみる。
「心配などという次元の世界ではなかったよ。
…地獄のようだった」
クラピカはリンのいない6日間の生活と、目覚めないリンをひたすら見守るしかできなかった5日間を振り返り、遠い目で窓の外に広がる茜の空を眺めた。
『私、クラピカに…そこまで辛い想いをさせちゃったんだね…』
沈んだ声で呟くと、悲しそうな顔で俯くリン。
クラピカは座っている椅子をベットの方へ寄せ、リンの手にそっと自分の手を添えた。
「気にするな。そういう事が言いたかったんじゃない」
『でもっ…すごく苦しかったんでしょ?私が苦しめたんでしょ?私、そんな想い、もう二度とクラピカにさせたくないよ…どうしよう』
クラピカの為になるなら、きっとこれからも無茶をするだろう事は自分でもわかりきっている。
罪悪感に落ち込むリン。
それでもクラピカの表情は、出会ってから今までで一番穏やかだった。
「リン…頼みがある」
『…ん?なに?』
「一生のうちでたった一度の私の我が儘だ…聞いてくれるか?」
『え…』
リンはあまりに穏やかすぎるクラピカの顔を見ながら、どことなく嫌な予感を感じて言葉に詰まった。
普段とは違う意味の覚悟―――
その瞳には微塵の迷いもなかった。
クラピカのお願い…
見当もつかない
聞くのが怖い……
でも………
『絶対聞くよ!お願い、なぁに?』
…私はクラピカの為に生きてる
一生で一度の我が儘…
叶えるんだ───
「──ありがとう…」
そして、クラピカの口がゆっくりと開かれた…
~続く~