11日間の地獄
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その輝く巨大な"何か"は、箱を飛び出すと、まるで磁石のように凄いスピードで、寝ているリンの頭の中へと吸い込まれていった。
リンの体が雷に打たれたようにビクリと痙攣し、一瞬ベッドから浮いた。
やがて、キラキラとリンの全身に金色の雪のようなものが降り注いで……
暫くすると、部屋中を光で埋め尽した形ない"何か"は収まり、何事もなかったかのように先程までの景色に戻った。
「…リン…」
呼びかけるが、返事はない。
と、その時
リンの瞼がピクリと動き、一拍置いてからゆっくりと薄く開かれた。
「リン…」
クラピカは身を乗り出してベットの上からリンの顔を覗き込む。
リンはクラピカを見つけた瞬間、傷だらけで酸素マスクをつけたまま、クラピカに満面の笑顔を向けた。
『……クラピカぁ……』
目を細めて、最高に嬉しそうな声で、リンがようやく囁くようにクラピカの名前を呼んだ。
その瞬間、クラピカの瞳からは涙が溢れ出し、そのままベットに崩れ落ちるように顔を伏せた。
『…クラピカ…どうしたの……?何か…あったの……?』
やっと声を振り絞り、クラピカを心配そうに見つめるリン。
クラピカは突っ伏したまま首を横に振った。
「何もない…ただ…お前が生きている事が……嬉しいんだ…」
嬉しいんだ…
とめどなく流れ出す温かい涙。
クラピカはもう、とうの昔に存在を諦めていたはずの神に、心の底から感謝した。
封じられていた記憶を取り戻したリンは、まるで失っていた魂の半分をも取り戻したかのように、めきめき回復していった。
リンにとってはクラピカが全て。
心だけではなく、それはもう既に体の一部であり、命だったのだ。
クラピカの記憶をなくしていた間の出来事は、今思えば全てがぼやけて夢だったんじゃないかとすら思う。
クロロと暮らす事を承諾した自分が、思い返すと本当に信じられない。
『ヒソカの野郎め~!今闘ったら絶対負ける気しないのにぃ!!』
「そんなボロボロで何言ってんだよ。何なら今から行ってくるか?」
『いや!負けないけどそれよりも二度と会いたくないっ!!』
見舞いに来ていたキルアが呆れたように突っ込み、ゴンは隣りでニコニコしている。
「しかしリンの回復の早さには医者も驚いていた。最初の見立ての半分程の期間で全快するだろうと」
椅子に掛けているクラピカが、林檎を剥きながらそう話した。
『そりゃあクラピカは私のエネルギーだからね!それさえ返してもらえばこっちのもんだよ!』
得意気に話すリンを、キルアは「ハイハイ」と受け流していた。
「ホント元気になったよね!キルアなんか面会謝絶の札かかった病室の前でずーっと待ってたんだよ。
暗い顔して下向いてさ~。俺、キルアの方が心配だったもん」
「あー!おま、うっせーよ!俺は別にリンが」
『ありがとうキルア!!
私ホントに愛されてるね!!』
キルアはカッと顔を赤くし、思わずクラピカの方を見る。
「あははは!キルア真っ赤だよ!」
『ホントだぁ!あははは!』
「~~~つーかさ!お前らマジ無神経すぎ!!少しは人の心と空気を読めっつーの!!」
そんな三人のやりとりを、クラピカはただ黙って微笑みながら見つめていた。
心は、この上なく穏やかだった。
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