呼ぶ声の元へ
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リンは目を伏せ、小さく笑った。
クロロとの生活は正直楽しい
クロロは優しくて大切にしてくれて、こんな自分を愛してくれて…
その想いは確かに私に伝わっていた
このまま側にいて、二人で旅をするのも悪くないと思う
きっと楽しい
ずっと一緒にいたら、好きになれそうな気がする
だけど……
いつも胸が苦しい
何か大切なものを確実に失くしている
記憶の片隅で霞がかった景色の中で
いつも誰かが呼んでいる
"クラピカ"
きっと、その人だ
いや、間違いない
私にはわかる……!
『…私、その人の為に犠牲になったり命を懸けたりしてたんだ…
そんなに…それほどまでに私、その人を愛してたんだね…?』
クロロに向けた、最初で最後の、最高の笑顔。
迷いのない、綺麗に澄んだ瞳で真っ直ぐにクロロを見つめた。
そのリンの笑顔から、クロロはもうどうしようもない、動く事のない固い決意の存在を感じた。
「…俺は今まで、欲しいと思った物を諦めた事がない。欲しい物は全て奪い取ってきた。
そしてお前は俺にとって初めて欲した人間だ。お前の幸せとやらを願って放してやる事は…俺にはできない」
そう言って顔を背けるクロロを、リンはギュッと抱き締めた。
『クロロ…ごめん…ごめんね…ごめんね…』
泣きながら力一杯、クロロを感じながら抱き締めた。
クロロの頬には、一筋の涙が伝っていた。
クロロは躊躇いながらリンの背中に回しかけた手を、グッと握って止めた。
そして静かに下ろした。
リンはクロロから離れると、そのまま振り返らずに開いていた扉から出て行った。
ゴンとキルアも直ぐに後を追う。
キルアは階段の途中で立ち止まり、もう一度クロロの所へ引き返した。
部屋へ戻ると、クロロは先程の場所から全く動かずにただ立ち尽くしていた。
ヨークシンで会った時からは想像もつかない姿…
本当に、本当に、リンの事が好きだった。
きっと、それだけだったんだ────
「…あんた変わったな。まるで別人だぜ」
それだけ言い放って、キルアはまた走って階段を登って行った。
クロロはクラピカとの取り引きの為にパクノダを待つ間、飛行船の中でセンリツに言われた言葉を思い出していた。
” 恋をするのはいい事だと思うわ。その想いが、貴方の全てを変えるかも知れない─── ”
クロロは瞼を閉じ、溜めた涙を睫毛で払った。
見事変えられたよ
俺の全部…引っくり返された
今は酷く胸が痛い
だが……
悪くなかった───
クロロは清々しく顔を上げた。
リンを想い、リンの中からクラピカを追い出した
その結果、最後にはこの手に何も残らなかったが…
リンを想ってよかった
何故こんな風に考えられるのか?
リンと出会ってから、自分には奇跡ばかりが起こる
それを感じるのが
本当におもしろかったんだ─────
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