呼ぶ声の元へ
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悲しげに涙を流すリンの肩を、クロロはそっと抱いて声を掛けた。
「大丈夫だ。リンの傍にはずっと俺がいる」
『…うっ…うん…ごめん……』
クロロの優しさも、リンの甘える姿も、まるでしっくりこない。
キルアとゴンは開いた口が塞がらない。
「おい…よくそんな事いけしゃあしゃあと言えるな!元はといえば全部お前が元凶だろ!」
「リンにはクラピカがいるんだ!早くリンを元に戻せ!」
クロロの腕にしがみついていたリンがクロロから離れ、もう一度ゴンに尋ねた。
『ねぇ…クラピカって誰?私、その人を知ってるんでしょ?私とその人はどういう関係なの?何で思い出せないの!?』
記憶を奪われても尚、リンの心はクラピカを忘れてはいない。
記憶の中の掴めない影を、リンは必死に追っている。
ゴンはそんなリンを悲しい瞳で見つめた。
「可哀想だ…リンはあんなに好きだったクラピカの事、忘れたくなんかなかったはずだ…それをお前は…」
ゴンは溢れくる怒りに任せてオーラを燃やす。
『待って!もっと教えて!その人…私はその人を好きだったの!?今どこにいるの?会わせて…!』
魂が求める。
失っていたものの大きさを思い知る。
止まらない涙。
クロロはそんなリンの腕を掴んだ。
「勘違いだ。リンはずっと俺といただろ?忘れたのか?」
『正直に答えて!クロロは私がクラピカって人を忘れるように何かしたの!?』
振り返りざまにクロロの両腕を掴み、リンは責めるように問い掛けた。
「だったら何だ?
あいつといたらお前は一生自分を犠牲にしながら生きて、命を落としてから間違っていたと気付くんだ。
忘れた方が楽になれる」
『クロロ…っ』
「目を覚ませ、リン。
俺ならお前を護ってやれる。不安も何もない生活をさせてやれるんだ」
クロロは必死にリンに訴えかける。
クロロのそんな姿を見て、キルアとゴンは怒りで一杯だった頭が冷え、リンに対するクロロの想いを知った。
血も涙もない非情な集団、盗賊、幻影旅団……
そのトップである団長のクロロ。
そんな男が…
たった一人の少女に対する、この真剣な想いはどうだろう。
そこにあるのは…リンへの紛れもない愛情だった。
キルアは少しクロロに同情した。
リンを愛する気持ち…それはキルアにも痛い程わかる。
手に入るならどんなにいいかと思う。
だけど、リンはもうずっとクラピカを好きで、いつもいつも脇目も振らずにクラピカの為だけに生きていた。
そんなリンを見て、キルアは気持ちを封印したのだ。
グッと握った拳からポタポタと赤い鮮血が滴り落ちる。
「…リン、帰ろうぜ。クラピカんとこにさ…。
こんな奴にやる為に、俺はお前を諦めたんじゃねーよ」
『……え……?』
余りに突然のキルアの告白に、リンの涙はその一瞬にして止まった。
ゴンもそんなキルアの気持ちに微塵も気付いておらず、驚いた顔でキルアを見つめたまま止まっている。
「耳を貸すな、リン。その感傷は錯覚だ。俺と一緒に旅をするうちに忘れられる。正気になれ」
キルアとクロロが、前と後ろからそれぞれに手を差し伸べる。
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