…って、誰…?
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それから数日が経ち、クラピカはノストラード氏からの連絡を受けて仕事に戻らなければならなくなった。
ボスや仕事仲間には、リンが休んでいる理由を体調不良だと嘘をついた。
心音を読むセンリツにだけは騙し通せるはずもなく、全てを話した。
センリツは、酷く衝撃を受けていた。
「団長が…リンを?今一体どこにいるのかしら?」
「わからない。だが必ず取り戻す。本当なら仕事どころではないが…こちらをないがしろにする訳にはいかない。大事な時だからな…」
クラピカは大分痩せてしまったように見える。
顔色も悪い。
細い指で頭を抱え、溜め息を吐く姿が痛々しくて見ていられない程だ。
「貴方、ちゃんと寝んでる?ご飯も食べていないんじゃ…」
「いや、大丈夫だ」
微かに口の端を上げ、心配かけまいと否定した。
本当はリンがいなくなってからほとんど寝ていない。
食事も喉を通らない。
とにかく心配で心配で…
会いたくて…
リンと暮らしたあの家で、独りでいるのが辛い。
クラピカはゴンとキルア、レオリオにも連絡を取った。
キルアにはしこたま責められた。
とにかく旅団のメンバーやヒソカ、そしてクロロの目撃情報。
またネットに載せて連絡を待つ状態になった。
精神的にも疲労困憊のクラピカを、今でも何とか支えているのは、皮肉にもクロロのあの言葉。
"絶対に傷つけたりしない"
"必ず護る"
リンは、クロロとの生活に少しずつ慣れつつあった。
クロロはなるべくリンを外に出さないようにしていたが、リンは部屋にいる方が疲れると言って、目を離すとすぐにどこかへ行ってしまった。
しかし夕方になると買い物袋を下げて帰って来る。
そして得意な料理を作っては二人で食べた。
クロロはリンには一切触れようとしなかった。
今はただ傍にいる事に満足していた。
リンにいつもの元気はなく、とても大人しかった。
笑顔を作っても、あの大輪のようなエネルギーは感じられない。
だが、それも暫くの事だ。
クロロはそう自分を励ましながら、リンの喜ぶ事、好きな事を、この生活の中で必死に探した。
「…暇だな。どうだリン、旅に出ないか?」
リンの作った食事を口に運びながら、クロロが言った。
『旅…二人で?』
その時、頭の奥で何かがチリッと響いた。
こんな事が、前にもあった気がする。
" 旅行にでも行くか? "
" ホント!?二人で!? "
誰かとそんな会話をした。
誰だっけ??
考えてみるけど、全く思い出せない。
『ホント!?───と二人で!?』
その時私は何て言ったんだっけ?
誰の名前を呼んだんだっけ?
思い出しそうになると霞がかかってまた消える。
「どうかしたか?」
ハッと顔を上げると、クロロがフォークを持つ手を止め、暗い瞳でこちらを見つめている。
慌てたリンは微笑んで首を振った。
『何でもないよ。旅、いいね。行こうか』
リンは胸の内を隠してそう答え、返ってきたクロロの笑顔に胸を撫で下ろした。
「よし、じゃあさっそく明日から行こう。まずはどこを回るかな。あ、俺が昔行ったところでさ──…」
楽しそうに話すクロロ。
リンはそんな姿を微笑ましく見つめた。
──考えるのはよそう
記憶を辿ろうとすると決まってクロロは悲しそうな顔をする
今はクロロを…悲しませたくない…
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