失うあの日
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「このタイミングでよかったかい?クロロ◆」
「ああ。申し分ないな」
リンもクラピカもクロロに気を取られて、始めから絶で気配を消しながら待機していたヒソカには気付かなかった。
『ちょちょちょ、離して!!やだよ!!ひぃ~!』
ヒソカは嫌がるリンをしっかりと後ろから抱き締めている。
「全く惜しいなあ◆僕もすごく君がお気に入りなんだけど。クロロと闘う為とはいえ、渡したくないな◆」
耳元で囁く、上擦った声。
リンは涙ぐみ、全身鳥肌だらけで固まった。
「悪いな、礼は弾む。ちゃんとタイマンも受ける。
そのまま捕まえててくれ」
「了解◆」
二人のそんなやりとりに、クラピカは怒りで拳を震わせる。
「…ヒソカ、貴様…っ」
「恐いなぁ…そんな顔しないでくれよ◆これもお仕事、仕方ないんだ◆」
ヒソカは奇妙な笑いを崩す事なく、しゃあしゃあと言ってのけた。
「貴様の汚い手でリンに触るな!今すぐ放せ!!」
瞳をゴウゴウと緋色に燃やし、クラピカは鎖を取り出す。
「君の鎖は確かに危険◇だから逃げちゃえばいいんだよね◆」
妖しげに笑みをこぼし、そう言ってヒソカはリンを捕まえたまま、まるで魔法のようにクラピカの前から姿を消した。
クラピカが「待て…」とまで言いかけてからハッとした。
その間だけヒソカに意識を移しただけだったのに、振り返るとクロロの姿はもうなかった。
その場所には、一瞬にしてクラピカだけが取り残された。
ヒソカに捕えられ、連れて来られたのは町外れの汚い廃ビル。
クロロの指示でヒソカがリンを荷物のように肩に抱え、共に中へ入る。
一体何をするつもり!?
何故こいつらに引き離されなきゃなんないんだろう!!
クラピカ…
嫌だ!!クラピカのとこに帰してよ───!!
リンはバンジーガム(ヒソカの能力)で体を縛られ、口も塞がれ、抵抗する事も叶わなかった。
廃ビルの長い廊下を抜け、突き当たりに扉の外れた部屋があった。
そこに誰かいる。
クロロとヒソカは灯りもないその暗い部屋に入っていく。
「待たせたな。この娘だ。頼む」
クロロの合図でヒソカはリンを床に下ろした。
体は縛られたまま、口を塞いでいたオーラだけを外される。
『ぶはっ! …ちょっとクロロ!!これ何!?誰よそれ!?あんた私に何しよっての!!』
威嚇するように睨み上げ、悲鳴のような声を張り上げるリン。
部屋で待っていた見た事もないその人物は、よく絵本で見た魔法使いのようにマントを深く被り、不気味で奇妙な雰囲気を醸し出している。
「リン、紹介するよ。この人は念の遣い手で、人の記憶を操る操作系能力者なんだ。
前から話はつけてあったが、もし今日お前が約束を守り、俺と緋の眼を探す旅について来てくれたならこの手は使わないはずだった。だが案の定それは果たされなかった。
だからさっき連絡を入れて来てもらった」
『ゴタクはいーから!!
その人に私の何を頼むって!?てゆーかクラピカのとこに帰してくれるかな!?』
自由に動かない体をよじりながら、リンは無駄な抵抗を繰り返す。
「…今から何をされるのか、本当に見当もつかないか?」
『全然!!』
クロロの話など、リンはほとんど聞いていなかった。
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