ふたつの約束
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目が覚めた時、時計は午前四時を指していた。
リンは目の前にあるクラピカの寝顔を、暫くの間眺めていた。
そして自分に絡み付いた彼の腕をそっとくぐり抜け、最小限用意していた小さな荷物を持って、静かに玄関へ向かった。
──結局、他に何の言い訳も思いつかず、黙って出る事になってしまった
今日は置き手紙すら書かずに家を出る
いつ帰るという約束ができないから
待っててなんて言えないし…
今、現存しているクルタ族の緋の眼は36対だと言われている
それを集める事…
一体どの位かかるだろう?
半年…一年?
もしかしたら、最後の1つは一生見付からないかも知れない
考えが悪い方へ引っ張られて、つい振り向いてクラピカにしがみつきたくなってくる。
…大丈夫
私は絶対、ここに帰って来るんだから!
リンは振り向く事を何とか堪え、意を決してドアノブに手を掛けた。
その時―――――
「リン」
『…!!』
突然、背後から聞こえた声に、リンの肩がビクッと上下した。
振り返る事ができずに、前を向いたまま凍り付く体。
「行かせるわけにはいかない。私の方を見ろ、リン」
低く、冷たい声…。
リンは言われた通りに、恐る恐るクラピカの方を向いた。
『わ、私…行かなきゃ…約束したんだ…破れないよ。…クラピカ…ごめん』
体が震える。
足が動かない。
言葉とは裏腹に、体はこのまま止められたくて…
この人と離れたくなくて………
頭ではわかってるのに!
「行かせない。生涯傍にいると言った、私との約束はどうなる?」
リンの瞳からパタパタと涙が落ちる。
「私はお前に守られる為に一緒にいるわけじゃない。自分の事は自分で守れる。お前の事も、私が必ず守る。
だから行くな。私の傍から離れる事は許さない!」
クラピカはリンの腕を強く掴み、強引に抱き寄せた。
そして、まるで噛み付くように乱暴なキスをして、そのままリンを黙らせた。
クラピカは全て知っていた。
電波が途切れる瞬間、聞こえてきたのはどれ程憎んでも飽きたらない男の声。
リンが何を考えてクロロと会ったのかなど、手に取るようにわかっていた。
「奴になど渡さない…お前は私のものだ」
リンの胸に広がる不安。
行かなければ…クラピカが狙われる
それなのに今、どうしてもこの腕を振りほどけないよ!
愛しい人の腕の中、リンは最後の決断を迫られていた。
~続く~