ふたつの約束
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クラピカは夕飯の用意をして、食べずに待っていてくれた。
「…とりあえず食べよう。お腹が空いただろう」
『うん』
二人はテーブルにつき、クラピカの作ったシチューを食べた。
ひとくち、口の中へ運んだ時、リンの頭の中にクラピカとの山小屋での三日間が鮮明に蘇った。
「こんなものしかできなかった」と言って、あの日もクラピカは世界一美味しいシチューを出してくれた。
何故だか今思い出すと、とても温かいのに切なくて、胸が苦しくなってくる。
……泣くな
今日は絶対、死ぬ気で演技をするんだ
『…すっごく美味しい!やっぱりクラピカのシチューは世界一だよ!』
リンは大はしゃぎして次々とシチューを口に運んだ。
クラピカは何も言わず、微笑んでいた。
今日の事も何も訊いてこない。
クラピカが気にしてないはずがない。
もしかしたら……
昨日の今日だし、勘付いている
少なくとも、ヒソカに会ったとは思ってるはずだ
喉の奥が微かに苦い
クラピカ…離れたくない
「まだ沢山ある。ゆっくり食べないとつっかえるぞ」
『うん!ありがとう!』
リンはクラピカの作ったシチューを食べながら、クラピカの顔、仕草や声を全て、心の中に焼き付けていた。
食事を終え、風呂も済ませ、先にゆっくりしながら読書していたクラピカの隣りに座った。
クラピカは何も言わず、食い付くように本に没頭している。
もしかして今日一日中、こうして本を読んでたのかな……
リンはクラピカの肩にコテンと寄りかかった。
───幸せ
傍にいるだけでいい
本当に存在してくれてるだけで、私は救われる
瞳を閉じ、リンは静かな口調でクラピカに言った。
『クラピカ…今日はずっと抱き締めてて欲しい』
それは、傍にいるようになって初めてのお願いだった。
クラピカは一拍置いてから静かに本を閉じて、リンを見た。
真摯にリンの瞳を真っ直ぐ捉える。
そして、どこか切ない表情でリンを引き寄せ、抱き締めた。
一瞬、何か言いたげな顔をしたのに、クラピカはそれを飲み込んだ。
リンも何も言わずに、ただクラピカの腕の温もりを感じている。
その夜、リンはずっとクラピカの腕の中で、抱き締められながら眠った。
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